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清楚な幼馴染なんて存在するはずがない!  作者: えすけ
恋のあらし吹く文化祭編
102/177

97 彼をヒッパレ

次の更新は2/27(火)です。

 テントの中で隠れてしばらく経った頃、入り口から外の様子を覗いてみた。

 人通りは、さすがに減っており、それなりに見通しが良く誰がいるかも良く分かる。

 今の所、知っている人は誰もいない。勇気を出し、外に出てみよう。


「ちょっと見てくる」

「大丈夫なの?」

「きっと大丈夫だ」


 俺は里沙にそう告げると、まずは屋台の並ぶ通りを一周した。

 SF研究部は誰もいない。山内たちもいない。イカを頬張る先輩もいない。邪魔と言ったら嫌な言い方だが、邪魔者は誰もいない。

 もう大丈夫だな。俺は、里沙を呼びにテントまで戻った。


 テントに入ると、すぐさま何かにぶつかった。確認するまでもなく、里沙だと分かった。

 彼女は、よろめき、その場にへたり込んでしまった。


「痛い……。何でぶつかるのよ」

「すまん。ってか入った瞬間ぶつかったんだが?」

「ちょうど外を見ようと思ったら、宏介が入ってきたんでしょ」

「お互いタイミングが悪かったな」

「そうね……」


 里沙は、右手を俺に向かって差し出してきた。


「何だ?」

「察しが悪いわね。起こして」


 自分で起きあがれると思うが、ここは差し出すのが紳士ということか。

 差し出された手を握ると、思ってもいない方向に力が加わり、そのまま引っ張られた。

 なぜだ。なぜ、里沙が力を入れて、俺を引っ張るんだ。

 俺は、不意打ちに引っかかり、そのまま里沙の上に覆い被さってしまった。


「ちょっ……! 何をするんだ!?」

「……」


 なぜか俺を引っ張った張本人も驚き、言葉を失っている。


「ごめん……」


 里沙は、一言だけ謝ると、また黙り込んだ。

 俺は彼女に密着しており、体温や体の柔らかさが直に伝わってくるほどだった。

 それと、場所のせいなのか知らないが、胸の鼓動の高鳴りをいつもより感じた。里沙に聞こえてしまうのではないだろうか。

 このままでは、気がおかしくなりそうだ。早く体勢を直さないと。だが、力が抜ける。


「ねぇ、こんなところ誰かに見られたら……どうする……?」

「どうするも何も、見られたらまずいだろ」

「そうね……。そろそろ向かわない?」

「その前に、起き上がらないとな」


 まず俺が立ち上がり、今度こそ里沙の手を引いた。

 2人とも少しよろめきながら、制服についた汚れを払う。


「さぁ、行くか!」

「いよいよね」


 気合いを入れ直し、テントから出ると、体育館裏に向かった。



 さて、いよいよ目的地が眼前に迫っているわけだが、先から男女のペアと何組かとすれ違ったのは、同志たちだと思う。

 体育館裏のある一点に人が集まっており、そこにお地蔵さんがあることは一目瞭然だった。


「あそこだな」

「そうね。思ったよりいるわね」

「皆んな知ってるもんだな」

「知らない方が珍しいんじゃない?」


 どうも俺は、そういうのに鈍感らしい。七不思議とかオカルトチックなものは、あまり信じない。

 否定をするわけではないが、俺が現実主義なだけだろうか。

 だが、妄想は好きだ。人の考えることに、制限はない。


「私たちも早速お願い事をするわよ」

「おう。近くに行こうか」


 俺と里沙がお地蔵さんの近くまで寄ると、そこに居た人たちは皆んな俺たちの方を驚いた様子で見てきた。

 里沙は特に気にしていないみたいだが、周りは突然の高校一の美少女襲来に釘付けだった。


続く

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