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清楚な幼馴染なんて存在するはずがない!  作者: えすけ
恋のあらし吹く文化祭編
101/177

96 止まれない、焦れったい

次の更新は2/25(日)です。

 早くこの場から離れねば、SF研究部の皆んなと合流してしまうかもしれない。


「すまん。この後、すぐ用事があるから感想は家でな!」

「そっか。頑張ってね!」

「頑張る……?」

「じゃあ、帰るね。里沙姉と上手くいったかは、帰ったらゆっくり聞かして」


 ドキっ! なぜこの後のことを……?

 何て答えようか迷っていると、亜子は俺の肩に手を置いてきた。


「あはは。図星だったね。でも、ほら、しっかりして! 告白は男らしさが大切だよ」

「そういうことか……。言っておくが、告白はしないぞ。何か大きな勘違いをしているみたいだけど……」

「またまた〜。今更私に隠すことないじゃん」

「本当にちょっと用事があるだけだから」

「ふーん。とにかく家で色々と聞かせてよ。じゃあね、今度こそ帰る」

「気をつけて帰れよ」


 亜子が見えなくなるまで、見送ったが、途中で何度もこちらを振り向いた。

 きっと里沙がどこからか現れないだろうか気になったのであろう。

 残念ながら、ここで合流はしない。


 それにしても、亜子は何でもお見通しですか。占い師の才能があるのではないだろうか。

 我が妹ながら底力は計り知れないぜ。


 おっと、ボサボサしてると作戦は失敗しそうだ。早く集合場所に向かうとしよう。

 俺が足を進めようとした瞬間、秋葉の声が聞こえた。


「宏くんと関野さん、はぐれちゃったね……」

「どこ行ったのかな? とりあえずDルームに戻れば、先に戻ってるかもしれないね」


 秋葉と柚子先輩の声が聞こえる。

 いる! 後ろの至近距離にいる!

 人混みも緩和されているため、このままでは確実に捕まってしまう。


 もう、進むしかない!

 俺は、今世紀最大の抜け足で渡り廊下を早歩きした。


「あれ? 宏くんあそこにいませんか?」


 秋葉の声が聞こえたようだが、気にするな。玄関まで直行だ。

 渡り廊下に繋がる校舎への入り口を跨ぐと、すぐに玄関がある。

 これまた異常なスピードで靴を履き替えると、犬の像前にたどり着いた。


「やっと来たわね」

「すまん! 道草食ってる余裕はない」


 既に集合場所にいた里沙の手を取ると、そのまま歩いた。


「ちょっと……! いきなり何?」


 里沙はよろめきながら、俺に引っ張られている。


「悪いな。秋葉たちにバレそうになった。今もつけられているかもしれない」

「どういうこと?」

「偶然、亜子に会って少し話してたら遅れをとった。そしたら、SF研究部の皆んなと合流しそうになった!」

「何やってるのよ……!」


 はぁ、はぁ。ちくしょう。何だって、こんなに急がないといけない!?

 無我夢中になっていたが、よく考えると里沙と手を繋いでいる状態だ。

 周りからも時折、視線を感じる。

 このまま行っても、つけられていたら、意味がない。一旦、落ち着こうか。


 ちょうど、食べ歩きロードの近くに差し掛かったため、幸いにも物陰はたくさんある。

 足を止め周りを確認したが、今の所、秋葉たちの姿は見えない。

 そして、側幕で覆われたテントが俺たちの目に飛び込んできた。

 見るからに倉庫代わりに使われているそれは、隠れ場として威力を発揮してくれるはずだ。


 俺と里沙は目を合わせ、お互いに無言で頷くと、そのテントの中に入った。


「どうもー。少しだけ隠れさせていただきます」


 誰もいなかったが、挨拶だけは欠かさない。


 ここで、少し緊張が緩み、一気に疲労が襲ってきた。


「はぁ……。はぁ……」

「何興奮してるのよ。変態」

「はぁ……。違うっ! 疲れたから息切れしてるんだ」

「この空間で紛らわしいことしないで」


 ふぅ……。疲れた。

 俺は、マラソンをしたかのように肩で息をしていた。


「それにしても、狭いわね」

「仕方ない。背に腹は変えられないさ」


 テントの中は、机やら器具やらでごった返しており、立っていられるスペースも限られていた。

 俺と里沙以外に、人が立つことのできる場所がない。それほどまでだった。どうやって備品を取り出すかという疑問は置いておくとして、誰かが入ってきたら色々と誤解を招くであろう状況に、心は休まらなかった。


「とんだ道草ね」

「すまん。まさかこんなことになるとは」

「ふふふ。バカみたい」


 里沙の様子は不機嫌ではなかった。

 むしろ、この状況を楽しんでいるみたいだ。


続く

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