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清楚な幼馴染なんて存在するはずがない!  作者: えすけ
素晴らしき高校生活と恋の始まり編
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9 ベリースイート微炭酸デート

 他の席にもお客さんがいてそこそこ賑やかなはずだが、俺たちの席だけ隔離されたかのように静寂に包まれている気がした。


「……ん? 一体何のことだ?」


 倉持からの問いかけに対する俺の第一声はそれだった。

 それは呼吸をするかのように自然と出た答えである。

 対面に座っている倉持は、前のめりになって俺に顔を近づけてきた。


「お願いだから本当のことを言って」

「……。なんのことだか見当がつかない」


 倉持は態勢を元に戻すと、肩の力を抜いた。そしてふぅと一息つくと話し始めた。


「そうよね。里沙の幼馴染だもん。そう簡単には話してくれないか」


 何かを悟ったような顔をしながら、スマートフォンを触りだした。


「これ、見てよ」


 そして、とある写真を俺に見せてきた。

 気のせいか、倉持の手が少し震えているように見える。


 そこに写っていたのは、茶髪の女の子と黒髪の地味な女の子だ。

 2人とも夕日をバックに満面の笑みで写っている。

 茶髪の女の子は紛れもなく里沙だ。

 そして、もう1人の地味な女の子は……?


「これは私が中学生の頃、里沙と一緒に撮った写真なの」

「どういうことだ……?」


 俺が倉持にそう問いかけたタイミングで里沙がトイレから戻って来る姿が見えた。


「あ、戻ってきたぞ」

「今日じゃなくてもいいから、また話そ」


 それから里沙が席に着くと、全く別の話題になった。しかし、里沙と倉持の関係や、写真のことを考えると会話が頭に入ってこない。


「ちょっと。聞いてるの、宏介?」

「あ、ああ……。俺もそう思うけどな」


 そう言うと、里沙はなぜか照れた。


「あはは! じゃあ、この後はプリクラでけってーい!」

「え……?」


 どうやらこの後、何をするか話していたみたいだ。


「私、プリクラなんて撮ったことないのに。恥ずかしいわ」

「いいじゃん。楽しいよ」

「俺も初めてなんだが」


 そんな会話をしていると、パンケーキが運ばれてきた。

 注文前に言った通り、俺たちは食べ比べをした。女子の頼んだパンケーキを食べると、一段と甘いような気がする。

 決して俺は変態じゃないぞ。


「あ、宏介君のソーダパンケーキもイケるね。しゅわしゅわして不思議な感覚」


 俺の頼んだ『さわやかビーチのソーダパンケーキ』は、口に入れるたびにしゅわしゅわと口の中で炭酸が弾けているようだった。

 味も甘すぎず、爽快感溢れるパンケーキに仕上がっている。


 倉持の頼んだ『ベリー甘いイチゴパンケーキ』は、めちゃくちゃ甘かった。イチゴの酸味もほのかに感じるが、大量に乗った生クリームとバニラアイスのおかげでミルク感が強まっている。だが、美味しい。めちゃくちゃ美味しい。さすが雑誌に載るぐらいだ。

 

 そして、里沙の頼んだ『恋する乙女のチョコパンケーキ』も食した。

 チョコパンケーキを食べる時、里沙は俺の顔をじっと見ていた。


「ん? どうかしたか?」

「い……いえ、何でもないわ。ただ美味しいのかなって」


 チョコパンケーキも美味しかった。生地自体にチョコが練りこんであり、上に乗った甘いチョコクリームと、ビターな板チョコが味のハーモニーを奏でている。うーん。絶妙なバランス。これも美味い!


 その後もどんどん食べ続け、俺たちはパンケーキを全て平らげた。


「本当に美味しかったね。また皆んなで来よう」

「そうね。来て良かったわ」

「誘ってくれてありがとな」

「うん!」


 倉持はとても嬉しそうだった。


 そして、会計を済ませると、俺たちは一護宮駅の近くのゲームセンターに行き、早速プリクラを撮った。

 出来上がった写真を見て、俺は思わず吹き出した。整形外科もびっくりな修正っぷりだな。

 まあ何にせよ、女子2人とプリクラ。信じられない。この瞬間を俺は一生忘れません!

 他にもUFOキャッチャーやレースゲームを楽しんだ。

 今が人生で一番輝いている。間違いなくそう断言できる。


 そうこうしていると時刻は18時。お開きの時間だ。


「じゃあね、私はこっちの電車乗るからー!」


 倉持は俺たちと反対方向へもう一駅、そこの駅付近に住んでいるらしい。


「また来週。今日はありがとう」

「おう。お疲れ。ありがとな!」

「それは私のセリフだってー」

 そう言って、俺たちは別れた。



 帰りの電車の中、相変わらず里沙は周りの視線を集めている。


「なぁ、気にならないのか?」

「え? 何がよ?」

「いや、ほら。周りの視線だよ」

「ああ、それね。気にならないわ。慣れたし、その視線は私にとって快感よ」


 えぇ。さすがにストレスになりそうな気がするが。こいつも変わり者だな。


「マジか。さすが学校一の美少女だ」

「ふふ。もっと私を褒め称えなさい」


 そう言うと里沙は黒髪をファサッと手でかきあげた。ほのかにシャンプーの香りが漂う。

 なんてこった。少しドキッとしてしまったぞ。



 その日の夜、お風呂に入っていた俺は今日の出来事を思い返していた。というよりか、勝手に思い浮かんでくる。


 里沙と倉持のあの写真が気になってしょうがない。


「ああああああ! 気になる!」


 そう叫びながら思い切りシャンプーをした。


 風呂から上がり、自分の部屋に行くと真っ先にスマートフォンを手に取っていた。

 サークルアプリを開き倉持へメッセージを送ろうとしている。

 マジで気になって気になってしょうがない。


 そして、考えるまでもなく倉持にメッセージを送った。


『今日はありがとう。ところで、明日か明後日の土日暇か?』


 それから1分も経たないうちに返信が来た。早いな。


『こっちこそ! どっちも空いてるけど。ひょっとしてデートのお誘い〜?笑』


『里沙と倉持について色々と聞きたい』


『ちょっとー。冗談を無視しないでよ。恥ずかしいじゃん!』


 そして、次の文に続く。


『いいよ。私もまだ聞きたいことあるし』


『じゃあ、土曜日の午前中に長谷駅付近のカフェで話すか?』


 長谷駅とは倉持の家の最寄駅だ。


『おっけい! じゃあ10時に駅の赤時計前集合で!』


『了解。突然悪いな』


『いいってことよ〜!』


 こうして俺と倉持は明日、会う約束をした。

 それにしても倉持は気さくでいい奴だな。俺にはもったいないほどの友達に思えてくるぜ。


続く

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