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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編小説

妹が嫌い

作者: きらと

それは墓場まで持っていく秘密。

 俺は妹が嫌いだった。

 俺が小学生の頃、どこに行ってもついてくる妹にうんざりしていた。

 ネット掲示板で相談すると「黄色いハンカチ」について教えられた。

『嫌いな人にやれば効果があるよ』

『私も20キログラム痩せる事が出来ました!』

『敵国の後方攪乱に最適だと思う。死ね(以下差別語と、某国に対する事実を語る)』

 黄色いハンカチは黄泉の国へ誘う切符となる。憎い相手に持たせれば連れて行ってくれると言う。呪いの一種だ。

「ほら、やるよ」

 学校の返り、近所の店でハンカチを少ない小遣いから買った。俺の差し出すハンカチを嬉しそうに受け取った妹は、台所で夕飯の支度をする母の元に駆けて行った。

「お母さん、お兄がハンカチくれた!」

「良かったわね」

 喜色満面の妹が母に抱きついて自慢する様子が鬱陶しかった。

 それからしばらくした雨の日、自転車で出かける俺の後ろを妹がついてきた。赤いレインコートを着て傘までさしている。

(濡れるのが嫌ならついてくるなよ)

 交差点で信号が点滅している。俺の足なら渡りきれるが、妹の小さい自転車では怪しい所だった。

 その時、妹をまいてやろうと言う考えが頭に浮かんだ。

 ペダルを踏む足に力を込めた。俺が渡りきった丁度ぐらいに信号が赤に変わった。

 にやにやしながら後ろを振り向くと妹がこっちに渡ってくる姿が見えた。

 してやったと暗い悦びを感じていたが、妹に青い車が勢いよく突っ込んで行く様子が見えた。

「えっ……」

 妹の体がマネキンの様に跳ねられて道路に叩きつけられた。こっちを見詰める妹の視線が印象的だった。首はねじれていてピクリとも動かない。

 相手の車はそのまま角の電柱に突っ込んで停車していた。

「子供が跳ねられたぞ!」

 辺りが騒然となって、警察や救急車が来た。

 妹は即死だった。

(黄色いハンカチの効果か?)

 怖くなってハンカチの事は誰にも喋らなかった。

 妹を跳ねた相手も電柱にぶつかった時に死んでいた。相手の両親が謝罪に訪れていたが、それで妹が帰ってくる訳でもない。俺としては特に問題もなかった。

 しばらくして相手の両親が自殺した事を知った。家財を処分してうちに賠償金として振り込んだ後だと言う。無責任な親が多い中で、子供の責任を負った相手の両親に感心すると同時に同情した。

 不幸はそれだけではなかった。妹を跳ねた相手は、法定外の超過勤務をさせられて鬱状態だったと発覚した。勤め先の社長はマスコミに叩かれ自殺、会社は倒産した。

 職を失い路頭に迷った社員の中には家族で無理心中する者も現れた。

 死の連鎖だ。

 妹の死後、両親は俺を溺愛し高校、大学と卒業させて貰った。

 今では大学の時に出来た彼女と結婚し二児の父親になった。男の子と女の子だ。

 娘の息子を見る目を見てると、昔の自分を思い出して心苦しくなる。

「ねえ、お兄待ってよ」

 娘の声に妹の声が重なっている様に聞こえた。

大卒で妻子持ちの兄は人生の勝ち組かな?

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― 新着の感想 ―
[一言] ホラーじゃないけどちょっとぞくっとしますね… 娘の「お兄ちゃん」は本当に息子に向けられたものなのか…
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