拠点の現状
『ご主人様、聞こえますでしょうか?』
私の念話が飛んでくる。
『バアルか?』
『はい、ご主人様。先ほど周囲の偵察が終わりましたので念話をさせていただきました。大丈夫だったでしょうか?』
『問題は無い、それで拠点の周囲はどうなっている?』
『それが、崖の上にありました。周囲の三方を崖に囲まれ通れるのは一方のみとなっております、またその一方も崖に挟まれた狭い通路となっております。』
ということは防衛面に関してはこの上ない立地条件というところか。我々の害になるような敵はいなかったのかな?
『我々の脅威になるようなものはおったか?ほかに動物などはおったか?』
『小動物はおりましたが、基本的にモンスターはおりませんでした。現状で戦闘状態になるものがいないのは僥倖かと思われます。』
『そうか、そういえばイシュタルとルシフェルは呼んでくれたか?頼みたいことがあるんだが。』
『はい、近くにおります。念話に参加させましょうか?』
『頼む』
『『ご主人様』』
許可した途端に姦しい声が聞こえてくる。念話だから直接頭の中に聞こえてくるのだからたちが悪い。
『久しぶりだな、イシュタル、それにルシフェル』
『『ご主人様も元気そうで何よりです。』』
ちょっとまねしないでよ、とかうるさいこの石頭とか聞こえてくる。派手にけんかしているみたいだな。
『それ以上騒ぐようならば追い出しますよ』
静かにバアルが切れていた。声の抑揚がなくなっているのが恐ろしい。
『『ご、ごめんなさい』』
『謝罪をするのならば私ではなくご主人様にしなさい。』
『『申し訳ございませんでした』』
『別にかまいわせんよ、では命令を伝える。イシュタル、私が戻るまでエキュシュの防衛権限を預ける。敵がきても守れるように防衛網と偵察網を作成せよ外装には幻覚魔法と偽装を施してくれ。ルシフェルは数人の部下と共に私の屋敷に来てくれ、雇われる形でな。バアルは周囲の情報を把握せよ、場合によっては戦闘も許可する。護衛は好きに連れていけ。情報の収集は可能な限りで行え、無理はするなよ。それぐらいだな、自由に動けるようになったら会いに行くと階層守護者に伝えてくれ。』
『皆も喜ぶでしょう、では行動に移ります。』
『外観は威厳のある形に致します。』
『連れていくのはどの様なのがよろしいですか?』
『可能な限り技能を教えてもらいたいから多才なもので頼むが、なるべく協調性のあるので頼むな。』
『わかりました。』
『では、不明な事があったら連絡をいれてくれ。』
『御意』
拠点であるヘルヴェイルの戦力がいかに強力であるとはいえこの世界には、考えられない強者がいる可能性は高い。私が自由に動き国での立場を確立するまでは、隠蔽に努めるべきだろう。利用されるのなんぞごめんだ。
城郭ヘルヴェイル:ヴェイスの所有していた拠点、全15階層で上部3階層は居住区になっている。1から10階層まではダンジョンになっており、各階層に二人の守護者がいる。11階層は飛空船発着場で、12階層は会議室や玉座が置かれている。
イシュタル:守護者管轄、守護者達を束ねる。戦闘能力は高くないが高い防御能力と治療魔法を持つ。正体はウンディーネ。
ルシフェル:ヴェイスの近衛部隊、メイド隊の隊長。光系統の魔法を好む。バアルとの仲は悪いが、ヴェイスの為ならば全く気にしない。正体は天使。