王都散策
ギルドから出てくると太陽は真上にいた、どうやら昼までギルドにいたようだ。
この世界での時間を知る方法は時計があるが馬鹿みたいな金額なので(ついでによく壊れる)持っているのは一種のステータスとなっている、その為所有者は大抵貴族だそうだ。大抵の人間は鐘の音で時間を把握する、二時間に一回鳴らされるので江戸時代の物と同じだと思えば間違いではない。
「さて、ベリアル。」
「はい。」
「拠点となる屋敷は見当が付いたか?」
冒険者ギルドに突撃してきたベリアルとルシフェルには予め別の行動をさせていたはずだ、もしそれを怠っていたならば罰を与えないといけない。
「ご命令に従い周囲の地形、屋敷の確認を行いました。結果、生活痕の無い屋敷を複数見つけました。明日にでも商人に取り扱っているのかを確認致します。」
「そうか、金額を軽く聞くだけに止めよ。下手に勘ぐられるようなことはするな、まだここで目立つわけにはいかんからな。」
「かしこまりました。」
「ルシフェルはどうだ?」
「王都にある店舗の位置の掌握、物価等はある程度ですが判明致しました。小麦などの穀物の値段が高騰しております。」
「何故だ?」
「盗賊が運搬ルートに出ていたそうです、そのルートですが我々が滞在した村の近くですので、先日処分した盗賊だと思われます。その為程なく治まるかと思われます。次に調味料等は豊富に出回っております、他には冷蔵庫らしきものが肉屋にありましたので魔法技術はかなり高いものだと推測出来ます。」
「分かった、引き続き調査を続けよ。取り合えず学園に入学し卒業するまではゆっくりやるとしよう。さて余った時間はどうするか・・・。」
「王都を見て回るのはいかがでしょうか?」
「そうするか、では案内を頼むぞルシフェル。」
「かしこまりました。」
結局三人で王都を散策することになった。
ーーーーー広場ーーーーー
「こちらが広場になります、噴水がありここから北に参りますと王城がございます、この噴水を中心に放射状に道が広がっておりそれが大通りとなっています。」
まるでパリのような都市構造だ、これは何処に何があるのかとても分かりやすい。
「大道芸人なども多くおるのだな。」
「はい、ここは街の中心になりますので露天や大道芸人がよく集まるそうです。」
歩きながら見て回ると火吹きをする芸をしたり、剣を飲み込んだりと一般的な芸を披露していた。噴水の近くでは吟遊詩人が歌を歌い、憩いの場を提供している。
「中々風情がありますね。」
「ヘルヴェイルでもこういうものがあれば良いかもしれんな、食堂しか無いからな。」
「イシュタルに聞いておきましょうか?」
「頼む、今あちらを管理しているのはイシュタルだからな。今はどうなっているのだろうか・・・。」
「移動が出来るようになりましたら確認致しますか?」
「バアルと合流次第、行こうとは思っているがな。あちらはあちらで大変らしいぞ、ここに着くまでに後一月はかかるそうだ。」
「左様ですか。」
「念話で連絡があったからな、それまではこちらで行動しておくさ。」
次は武具屋に行くことにして鍛冶通りを目指す。鍛冶通りは王都の東側にある。西側は居住区画だそうで衣類や食料品はこちらで売っているそうだ。
カーン、カーン
通りを歩くと鍛冶の音が聞こえる。
「ふむ、実に活気に満ちているな。」
「少々騒がしいくらいです。」
ルシフェルが眉間に皺を寄せている。
「確かにな、だが鍛冶屋が静かだったらその店は儲かっていないか何かの問題が発生しているということだ。煩いくらいが平常なんだよ。」
「その通りですよ、ルシフェル。しかしヴェイス様、酒場が多いのはどういう理由なのですか?」
通りには鍛冶屋以外にも色々な施設があるが、ここには酒場が郡を抜いて多い。数件毎に一つある。
「ふむ、腕の良い鍛冶師はたいていドワーフ等の手先が器用なものが多い。そしてドワーフは酒好きだ、いや酒が無いと動かないというべきか。それが原因で酒場が固まっているのだろう。」
「なるほど。」
「それを奪おうとする為政者はおるまい、一種の治外法権が確立されているようなものだ。それに下手をすると自国の武器の安定供給するところが崩壊しかねんからな。」
「納得しました。」
「ではあそこの店にでも入ってみるとしよう。」
「あちらの方が繁盛しておりますが。」
ルシフェルが指差した店は人がひっきりなしに入っている三階建ての大型店だ。
「あえて人の頭を見に行く必要もあるまい。それに店を構えている以上腕に自信はあるはずだ。」
「ご主人様のお眼鏡に敵うものがあれば良いのですけど。」
「それは無理というものだろう。」
「お前らヴァジュラやロンギヌス並みのがあるとでも思っとるのか?」
「さすがに無いとは思っています。」
「同じく。」
あれ作るのにかなりの時間がかかったのだけどな。言わんでおくか。
「早く入るぞ。」
「「かしこまりました。」」
店に入ると薄暗いが灯りは灯っていたが、人気がまるでない。
「店主は留守なのか?」
「奥に居るのではないですか?」
「であれば好都合、早速技術を盗ませてもらおう。」
奥を覗いてみると鍛冶をしているドワーフがいた。槌で剣を打っているようだ。
『鍛冶』を取得しました。
目的達成。
「ん?どうしたんだ、坊主。母ちゃんからお使いでも頼まれたか?」
ドワーフが話しかけてくる。
「いえ違います。鍛冶というのが興味がありましてそれで覗いていたんです。」
私がそう言うと大声で笑い出す。
「ガッハッハッハッ。それは将来有望だなぁ、だがお前さんは見たところ人族だろう?それだと覚えるのが大変だぞ。俺たちドワーフなら比較的簡単に修得出来るんだが。」
「そうなんですか・・・。(もう取得してしまったんだけどね。)」
「まぁ、儂らに注文してもらったら作ってやるぞ。」
「そうですね、またお金が出来たらお願いします。」
「おう、その時は歓迎してやるぞ。」
手を振って外に出る。十分に離れたところでべリアルが話しかけてくる。
「あの様な店で買わずともヘルヴェイルに戻れば有用な装備がございますよ。」
「いらん絡みを受けるだけだ、弱い装備で実力を見せつけてからヘルヴェイルにある装備に変える。それで十分だ。しかし人の良さそうな店主だったな、あれならば繁盛する筈なのだが何故閑古鳥が鳴いているのか?」
「何か裏があるのかも知れませんね、例えば他の店が潰しにかかっているとか。」
「その辺りが無難だな。」
さらに周囲を見て回ったあと衣類等は後日見ることにして宿に帰り夕食をとる。実に有意義な一日であった。




