トラブル
狩りを終えて城門につくと予定通り夕方になっていた。町に入るものもいないのか空いている。
「では、身分証を提示して貰おうか。」
威圧的に話してくる衛兵(若め)がいる。家の方針で身分証を持っていない私は提示のしようもない。まあ、どこぞの村人とでもしておこう。馬車はボロいのにしているし荷台も古くしている(ただし中身は全く別物に仕上がっている)。
「近くの村から出てきたので身分証は持っていないのですが、どうしたらいいでしょうか?」
こちらが村人と分かるとさらに威張ってこう言った。
「ふん、田舎者か。身分証がない場合町に入るのに一人銀貨一枚必要だ。持っているか?」
バアルが情報収集していたときの入場料は身分証が無くて銅貨五枚、身分証があった場合銅貨三枚だったそうだ。相当ぼったくるつもりだな。(ちなみに一万円くらい)
「いえ持ってません。」
実は持っているがこんなところで使うつもりはない。これで衛兵全体が腐っているか、こいつ個人が腐っているかが分かるだろう。
「では仕方がない、特別に銅貨十枚にしてやろう。感謝し・・・ろ・・・」
私の後ろを見て固まったので後ろを振り向くと小さくて横に大きな人がいた。
「てめえ、何やってんだ?また勝手に入場料釣り上げたのか。このど阿呆‼」
おー、うるさい。鼓膜が破れそうだ。
「博打の借金を返すために真面目に仕事しているかと思えば、また勝手に値段釣り上げやがって!!」
「あんな金額簡単に返せるかよ‼悠長にやってたら母ちゃんが死んじまう。」
「だからって博打に手を出してるんじゃねぇ。それとも一般市民に迷惑をかけるのがお前のやり方か!!」
後は殴る蹴るの戦いになっている、するのはいいがこちらはさっさと中に入って休みたいのだ。私が止めようとしたが考え直す。
「私が魔法を使って止めた場合、目立つ可能性が高い、まだ有名になる気はないのだから不要な面倒は避けるべきだ。だがここで待っていてもらちが明かないこともまた確かだ。というよりもさっさと私は休みたいのだ。ならば少しは名が売れても文句は言えまい、鎧はおるか。」
足下の影から馬に跨がった騎士が現れる。
『お呼びでしょうか、主よ。』
「一旦下げておったがこれからは表で私の警護をしろ、そこにいる二人の話が終わらないから話ができる状態にしてやれ。」
『承知しました。』
姫様を怖がらせないために下げておいた鎧を呼び出して処置に当たらせる。
『ムン!!』
喧嘩をしている二人の間に大剣を叩き込む、全高3メートル以上の大剣でなおかつ鞘も鉄製なので一種の質量兵器だ。そういえばなんキロあるのかな?衛兵達のほうを見ると腰を抜かしており若い衛兵は漏らしていた。
『いい加減に黙るがよい、我が主は大変にご不快だ。速やかに町に入れるようにせよ、少しでも遅れたら貴様らの命は無いぞ。』
殺気を交えながら話す、淡々としながら殺気を込めるわけだからそりゃ怖いわな、あ、若い衛兵が気絶した。御愁傷様だな。・・・何か臭いなと思ったら大きい方も漏らしていた、いっそのこと焼き殺してやろうか。
『終わりました、どうぞご見聞なさってください。』
「・・・ご苦労、確かに不快だったが、まあいいだろう。」
前に出て話すと年をとった衛兵が土下座をする、それは見事なものだった。
「お待たせして申し訳ございません、すぐに、すぐに入場手続きをいたしますので、平に平にご容赦を!!」
どこの時代劇だ、だが早くしてくれるのならばそれに越したことはない。私はさっさと食事をして寝たいのだ。
「早くしてくださいね、それと私は普通の村人ということにしておいてください、もしどこかに広まった場合あなた達を皆殺しにしますから、くれぐれもお忘れの無いように。」
膝をガクブルさせながら詰め所に入るとすぐに出てきた。
「お、お待たせいたしました。こちらが入場片になります、町から出る場合それを衛兵に渡して下さい。」
「そうすると町に入る度にお金を払うのですか?」
銅貨を渡しながら聞くとべリアルが答える。
「ご主人様、ギルドの身分証があれば入場料金はかかりません、これはギルドに一括して請求しているからです。ギルドでは報酬の内3割をギルドが回収します、それらの金額がこれらに使われるのです。後例外として猟師や農家も入場料金はかかりません。」
「なるほどギルドとは良くできているものなのだな。」
うんうんと頷き若い衛兵を起こす。
「起きんな、仕方がない、黒王踏め。ただし潰すなよ。」
「ブルン」
気絶している背中に黒王の足がのせられ徐々に体重がかけられていく。
「ぎゃあああ、いてぇいてぇ」
必死に足を退けようとするが退くわけがない。そもそも重量が違うのだ。
「目が覚めました?全くそんなところで寝てたら風邪をひきますよ。」
じゃあ足を退けさせろとは言えない、彼が潰せと言えば潰すことが可能なことは痛いほど分かるためだ。
「さて、あなたの借金とはいくらなのですか?」
「は?」
訳が分からないという風に答えると
「はあ、自分の立場も分からないのですか、黒王。もっと体重をかけろ。」
ミシミシ、ベキ
骨が軋む音がしたあと何かが折れたような音がする、多分肋骨が折れたのだろう
「があああ」
「ルシフェル、治療。」
「かしこまりました。」
治療魔法がかけられ傷が全快する、ただし心の方は別だが。
「ではもう一度聞きます、あなたの借金とはいくらなのですか?」
今度は殺そうかなと思いつつ聞くと顔面を真っ白にしながら返事をする。
「き、金貨30枚です。」
一般人の一月の稼ぎが大体銀貨二枚、衛兵だと少し多いので銀貨三枚だ。
「あなたの家族の治療代も含めてですか?」
私が聞きたいのは総額なので当然治療代も含むのだ。
「そ、そのとおりです。」
「ふむ」
少し思案をする、ここで彼を助けると名前は売れるだろう。だが不用意に助けるといらないと面倒も背負い込むことになる。・・・いずれ名を上げることに変わりはない、予定を繰り上げる。アイテムボックスから狩っておいたゴブリンやオークを取り出す、改めてみると下級のドラゴンやリザードマンなんかもいた、これはべリアル達が狩ったんだな。
ドン
「こ、これは?」
「凄い量だ…」
開いた口が塞がら無いようになっている。
「これで足りるでしょう、これはあなたに対する投資です、利子は付けませんが返すのはあなたの自由です。ですがこれからは真っ当に生きてください、また無関係な人に金を吹っ掛けたら・・・どうなるかわかっていますね?」
笑いながら伝えると全力で首を振り、深く深く礼をしたのだった。
「必ず、必ずお返しします。このご恩は忘れません、坊っちゃん」
これで真人間に戻ってくれるだろう・・・多分。しかし坊っちゃんってなんだ、坊っちゃんって。諦めながら町に入るのだった、なお鎧と骨の証明片ももらっておいた。
通貨:白金貨一枚=金貨百枚、金貨一枚=銀貨百枚、銀貨一枚=銅貨百枚、銅貨一枚=石貨百枚 石貨一枚=一円
証明片:魔物に所有者がいるかどうかの判明に使う、大きさは自由に変わる。




