ヘルヴェイルでは
ーーーーーヘルヴェイル(五年前)ーーーーー
「ご主人様からここの防衛を任された以上落とされることなんて有ってはならないわ。まず防衛施設を作るために周囲の地形の確認ね。」
配下のドラゴンや天使達を使い地形の確認を行う、北は湖に面している(湖の大きさは琵琶湖なみ)他の三方は山に囲まれており小さな道や崖を通らなければここには入ってこれない地形のようだ。その中央にヘルヴェイルがある、周囲は五キロ程の平地になっておりウサギのような魔物や鹿の魔物がいる。はっきり言えば雑魚。
「どんな奴が来るか分からないけれど周囲の防衛施設も必要よね。」
第二階層からゴーレムを多数呼び出し城壁を造り出す。空からの攻撃には気にしなくても問題はないので地上の施設を充実させる。城壁は最終防衛線と1~5まで造る、間隔は100メートルほど。平地の大半がヘルヴェイルの物になるが問題はないだろう。第1城壁は高さが一メートルほどで水濠を造り敵の出方を伺うエリアとする、第2城壁は2メートルの高さの城壁にして中は空堀にする、地面には麻痺性の毒を分泌する花やそれを主食にする毛虫等を置いておく。第3城壁は一見平地が続いているように見えるが落とし穴や触れると針のようになる芝生等キツいものになっている、第4城壁は毒性の植物が植えられている。第5城壁は霧が発生しており幻覚作用がある。基本的に維持は必要ない物に仕上がった。
「うん、これで陸は問題ないわね。次は湖に面している方ね、凍るのかしらねここ?」
そもそも季節があるのかどうかさえ分からないのだから手が打てない。
「人が来るかも知れないけど港はいらないわね、このままにしておきましょう。ああ、ここでご主人様と一緒に泳げたら最高でしょうね~。」
妄想の世界に飛び立ってしまった彼女に突っ込みを入れられるものは誰もいない、近場にいる配下の者達もまたか、という目をしている。
「は!いけないいけない。まだ完成にはほど遠いのだから休む暇などは無いわ、さ、気合いを入れるわよ。」
ーーーーー二月後ーーーーー
「さて、今年もここに来れたな。」
湖から冬を避けるために越冬しに来たトドのような魔物達が姿を現す、数は200体はいるだろうか。
「さて、いつものようにゆっくりと休むとしよう。」
集団で草原の中程に向かっていると見慣れないものが目についた。
「何だ?あれは」
その魔物達は始めてみるそれに答えを出せようはずがない、人に酷似しているコボルトやゴブリンならば砦等という近い答えは出ただろうが。そもそもトド等に何かを築くという習慣はない。
「ええい、これでは休めんではないか、壊して進むぞ!!男衆は前に出よ。」
牙が生えたトド達が前に出ていざ攻撃というときに巨大な雷が落ち、一人の女性が出てくる。
「何者だ、貴様!!」
トドが聞くと嫌そうに顔をしかめながら答える。
「私はこのヘルヴェイルの防衛を任されているイシュタルです、元来あなた方のような畜生に名乗ることはないのですが、仕方がなく名乗って上げましょう。」
「な、何だと!!我らを畜生というか!!」
一部のトドがそう言って襲いかかったが
「彼我の実力差位は理解できると思ったのですが、所詮は畜生ですね。」
まず一匹蹴りあげられ、また一匹脳髄を叩き潰され頭を握り潰され、五匹程潰されたらさすがに警戒したのか距離をとろうとしたが
「距離を取っても無駄です、『アイス・ソーン』」
トドの足元から氷の棘が出てきて貫いた、数は30匹程。
「いい加減力の差が理解できました?ここは私たちのご主人様の物です、分かったらさっさと失せなさい畜生共が!!」
縮こまって見てくるトドを見て吐き捨てるように言ったが
「わ、若い者が暴走しただけです、我らにはあなた方と戦う気はございません。」
「ではさっさと去りなさい。私達も暇ではないのですよ。」
踵を返してヘルヴェイルに入ろうとしたときトドのまとめ役が呼び止める。
「お、お待ちください。我々はどうすれば良いのですか?」
どうすればイシュタルの機嫌が取れるかと言う不安から伺いをたてようとしている。
「私達に仕えたいというの?」
冷たい目で見下ろしながら問う、彼女にとって彼等は雑魚でしかない。もし仕えるといった場合ご主人様にお伺いをたてないといけないのは間違いがない。
「はい、我々はある程度の強さがあると自負しております、どうか一考をお願い致します。」
トドが一斉に頭を下げる。
「はあ、分かりました。少し待っていなさい。」
念話を行いヴェイスに連絡をとる、結果は別にどちらでも良い、お前が良いという方に行えとのことだった。
「お許しが出ましたので許可します、湖の所の警備に付きなさい。必要な物があったら連絡を入れなさい、あとご主人様が来られたとき不敬を働いたら・・・消しますよ。」
殺気を出しながら言われたので全力で頭を振った。
「では、励むように。」
湖の周辺に居住地域が設定されここに定住することになった、なお種族名はほぼそのままのトンドというらしい、死体は有効に使われた(肉は食事に皮や牙は鎧などに使われた)。
それから五年程の間に似たような事件が複数ありヘルヴェイルには結構な魔物がいることになった。
「これでご主人様がいついらしても問題ないわね。」
そう言って胸を張るイシュタルがいたとか、どうとか。




