朝食
「母様、一人で座れます。降ろしてください。」
「だーめ、ヴェイス君は母様と一緒なの。二時間も離れたんだから母様が食べさせてあげる、はい、あーん。」
一体何の拷問だ。精神年齢が40くらいになるのにあーんはないだろう‼あーんは。
「ヴェイス君は母様が嫌い?」
子供相手に涙目になるなよ、ただでさえ断りにくいのに。
「あ、あーん」
「はい、あーん」
「あー!お母様ずるい、ヴェー君を抱っこするのは私なの」
いきなり入ってきた少女が怒りだす。五歳年上の私の姉のエレンだ。まあ食事時の私はこのようにぬいぐるみのような扱いだ。もう諦めるしかないか。
「ずるくはないわよ‼私達は親子なんだから普通よ。ねーヴェー君。」
「姉様の方が良いわよ、こっちにおいでヴェー君。」
今は夏期休暇なのでこっちに帰って来ているのだが・・・、姉様の愛情表現も抱き締める訳だから食事は自ずとあーん状態だ。何の拷問だ。
泣きたい。でも代わりがいるかと言ったらそうでもない。一回逃げてルシフェル達と共に食事をしたことがあるが、あれに比べたらこっちの方がましだ。あの時はルシフェルから逃げたと思ったらフォルトゥナに捕まって・・・思い出したくない。
「お、今日も一緒に飯を食っているな。」
「仲が良いのは良いことだぞ。」
ドアが開き父が入ってくる。
「あら?あなた。訓練は終わったのですか?」
「ああ、新人がほとんどぶっ倒れたんでな。午後からまたしごいてやる。」
この父は手加減と言う言葉を何処かに忘れて来たんだろうな。
「父様、ほどほどにしておかないと、また新人が辞めてしまいますよ。ただでさえ人員が不足しやすいんですから、しゃんと手加減してください。」
「相変わらずお前は子供らしくないな。まあ人員不足は事実だから気を付けよう、と飯だー。」
「訓練をすると腹が減ってかなわないわね。」
数も戦力の一つだから気をつけて欲しいんだが、魔獣が現れると人海戦術はあまり役に立たない。と言うのも、多種多様な種類の魔獣がいるため大勢で戦うか少人数で戦うかという判断が難しいのだ。そのため魔境の近くでは兵士が足りなくなるというのはよくある事態であった。
「ごちそうさまでした。」
「あら、もういいの?」
「はい、本を読もうと思います。」
訓練が堂々と出来ないならば今は知識を集める事にする。
「分かったわ。母様はお仕事があるからフェフ、ルシフェルついて行ってあげて。」
「「かしこまりました、奥様」」
ルシフェルだけならばバアル達と連絡が取れたのだが・・・。それは夜にするか。
「さあ、参りましょう。坊っちゃま」
二人と共に書斎に向かうのだった。はあ、早く大きくなりたい。
次はまた三年ほど飛びます。




