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見つめられたら 〜I fallin' love with you〜・4

これで文化祭編終了でございます。

最後までお楽しみいただければ。

黒いニット帽を被った、うちの生徒。多分、男子。

それだけを頭に入れ、目の前の人物を追った。

足の速い花穂が俺の横に並ぶ。

「りーくん…売上金泥棒って…?」

「…あいつだ。黒いニット帽の」

走りながら、俺は花穂に呟くように話す。

「わかった」

俺らは、二人で犯人を追った。

犯人は怯えるように、時々こちらを振り返るが、止まる気配はまるでない。

角を曲がった。

俺と花穂も角を曲がり、人混みを押しのけて、半ば飛ぶようにして階段を下りた。

追い掛けるのは一向に構わないのだが【人が多い】というのが難点だ。

っていうかなんで売上金泥棒なんかするんだよっ…!!

縁日の多い一年のクラスの前の廊下を走り抜けていく。

人が多すぎて、時折犯人を見失いそうになる。

前だけでなく後ろを振り返ってみないと、花穂がいるか確認できない。

よし、いるな……。

「通行中の皆さん、失礼しまーす」

「下通しまーす!!」

どこかのクラスの人の声が聞こえた。

下通します?

なんの…って、あぁぁぁ!!!

下を通したのは【棒】だった。

しかもリンボーダンス用の長いやつ。

そういえば、演技の一環で【リンボーダンス】をするクラスがあったような。

そんなことを考えながら、俺はひょいっと棒を飛んだ。

間一髪……って、

「きゃぁっ!!」

「花、穂…?」

花穂が棒に引っかかって転んでいた。

「…ハ、ァ…大丈夫、か?」

「ごめん。足くじいたかも…」

犯人が中庭に出た。

「おい、そこの一年!」

「え?」

「俺ら…?」

二人で談笑している一年の男子生徒を呼ぶ。

二人がきょとんとした顔になった。…当たり前か。

「そいつ足をくじいたんだ。保健室に連れて行ってくれ! はやく!!」

「「は、は、はいぃ!!」」

怯えたように二人が返事をした。

一度立ち止まってしんどかったが、もうそんなこと気にせず、ダッシュをかけた。

花穂、絶対犯人を捕まえてやる…!!

そして、信一さんと信二さんに酷い目にあわせてやるっ!!


中庭では、たくさんの屋台が並んでいた。

その間を縫って犯人は逃亡していく。

追い掛けるだけで必死だ。息があがって、そろそろ苦しい。

しかも犯人は、かなり危ない。

刃物を向けてくる〜などならまだ、なんとか解決のしようがあるのだが、犯人はそんなことしない。

無意識でもっと、危険なことをしているのだ。

人の間をぬって走るから、当然ものにもぶち当たる訳で……。

犯人はガスボンベを二回ほどたおしかけ、小さな子にぶつかり、転ばせ、それでも走り続ける。

これではいつガスボンベが爆発するとも、子どもが大けがするとも言えない。

俺は、生徒会長を発見して、ある案を思いついた。

「…会長…」

「りーくんとやら、そんなに走って…どうした?」

「売上金泥棒が出ました。現在逃走中なんです。お願いです。黒ニット帽でうちの制服を着て、小脇に黒い箱を持った男子生徒を捕まえるように促してください」

「…ふむ。ゲームに仕立てて、生徒会の突発ドッキリ。で、良いか?」

会長がニヤリと笑った。

俺は頷いて、犯人をまた、追い掛けだした。


中央棟に犯人が逃げ込んだあたりで、校内放送が入った。

「ピーンポーンパーンポーン! こんにちは、みなづき学園生徒会長・水無月あかりです。突然ですが、ゲームです! 現在中央棟あたりを逃げている男子生徒を捕まえてください。これは生徒会主催の【ゲーム】です!」

会長ありがとうございます!!

「彼は、黒のニット帽、みなづき学園の制服、小脇に黒箱を抱えています。捕まえた方には、生徒会役員の誰かとプライベートお付き合い券プレゼント☆ さあ、うちの生徒は全員参加よ!! さ、頑張ってね〜!!」

そこで放送がきれた。

中央棟内にいる生徒の視線が、犯人に集中した。

「プライベートお付き合い券…」

「悠里くん。悠里くんとお付き合い…」

「会長、会長様…」

「鏡子さん、鏡子さんに、これで、これでっ!!」

「いやいや美優ちゃんだろ…」

それぞれの欲望の声が聞こえる。

これは、恐い…!!

いや、でもこれは花穂を怪我させた報復だ。

俺は立ち止まり、拳を握りしめた。

「みなさーん!! 生徒会の補佐をしているものでーす!! 捕まえるのは、あそこに居る黒ニットですよー!!!」

大声で叫んでやった。

周りの人間の目が光った。


ズドドドドドドド…………


各方面から地響きのような音がした。

「うおおーーーー!!!」

「一日プライベートお付き合い券は、私のものよー!!!」

「悠里様は私のモノーーー!!」

「鏡子様ぁー!!!」

「捕まえろ!! 全力でだぁぁ!!」

「早く、早くぅぅぅ!!!!」

「大人しくしろーーーー!!!!」

…………………。

人間って恐いな。


その五分後、剣道部の男子部長である宵乃一夜によって捕らえられた。

ちなみに峰打ちで倒されていた……。


犯人は生徒会室に連行され、犯行理由を問いただされた。

彼は【カツアゲ】にあっていたらしい。

そして金を渡さなければ大変な目に遭わされる。というのに怯えた彼が実行した結果が【売上金泥棒】だった。

「そのバカどもは、うちの生徒か?」

「……高三の……」

俺は、ふと名案が浮かんだ。

いや……この名案には、被害者で加害者の彼も被害にあうが…まあ、それは自業自得だよな。

「会長。俺に、処理を任せてください」

「あてがあるのか? りーくん」

俺は携帯電話で、とある人にダイアルした。

その、とある人とは………。


パチパチとキャンプファイアーの燃える音が聞こえる。

花穂は自分の足と、フォークダンスを踊る人たちを見比べて溜息をついた。

(せっかく午前中はりーくんと、たくさん一緒にいれたのに……)

「…ハァ」

売上金泥棒を追い掛けてるとき、りーくんの足を引っ張ってしまった。

花穂は、それが心苦しくてならなかった。

(やっぱり…うまくいかない……)

「…花穂?」


とある人。

それは、花穂の双子の兄。

信一さんと信二さんだ。

今回の事件で、花穂は足を怪我した。

花穂を超超超溺愛している彼らに事情を話せば、必ず鉄裁がくだる。

これには確信があった。

俺は、電話で、二人に事情を話し、指定の時間に指定の場所に来て貰うことを約束した。


これで一つ解決だ。


もう一つの問題。

そう、花穂本人である。

俺が巻き込んで、怪我までさせてしまった。

謝らなければ……。と、思った頃にはもう日が暮れ、生徒だけの後夜祭が始まっていた。


神楽夜に聞いたところ、花穂はキャンプファイアーを見てくると言ったらしい。

なのでキャンプファイアーの出ている中庭に出ると、彼女はすぐに見つかった。

制服で、一人体育座りをして、フォークダンスを見つめていた。

「…花穂」

「っ、りーくん!」

俺は、花穂の隣に腰を下ろした。

「大丈夫か? 足…」

「…うん」

ささやかな沈黙。

「なぁっ!」

「あのっ!」

ほぼ同時だった。

「あ…どうしたんだよ花穂」

「うぅん。り、りーくん先にどうぞ…」

俺は軽く咳払いしてから、思いっきり花穂に頭を下げた。

「悪い!」

「…え?」

「犯人追い掛けてるとき…怪我させて、本当に悪い!! 巻き込んじまって…その、ごめん」

花穂は、ブンブンと頭を振った。

「……私が勝手についてって、勝手に怪我しただけだから! 私こそごめんなさい! かえって、足手まといになっちゃったし……」

「いや、そんなことねぇよ。っていうか悪いの俺だし…」

「りーくんは悪くない! 私がドジだから!」

「明らかに俺のせいだろ!!」

「違うってばぁ!!」

………五分後。

互いに息切れ状態。

顔をあげると、花穂と目があった。

「…ぷっ」

「あはははは」

今度は互いに笑いあった。

「なぁ」

「…何?」

「あの…エプロンドレスさ」

「うん」

「すごい似合ってた」

俺が言うと、花穂の顔が真っ赤になった。

「……ありがとう………」

「おう。そうだ! 俺たちも、踊るか?」

「でも…私……」

花穂が自分の足に目を落とした。

「リードしてやるよ」

立ち上がり、彼女に手をさしのべた。

「……うん!」

彼女は、俺の手を取り立ち上がった。


後夜祭はまだまだこれから! である。



文化祭編 終。


次はまたよくわからない学校行事に振り回されてもらいます・笑

ここまで読んで頂き、ありがとうございます!!!

また、感想などいただければ…もう、泣きます。

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