表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
春風  作者: たむえもん
3/8

第3話

その日の夜、恭一は布団に入り、ぼんやりと天井を眺めていた。

明日は学校だというのに、なかなか寝付けないでいた。



(…)



ごろんと寝がえりを打って目を閉じるが、やはり昼間の出来事が頭を離れなかった。



(ハルのやつ、あんなにきつく締めやがって…)



ちっと舌打ちしてもう一度寝がえりを打つが、どう態勢を変えても体が落ち着かない感じがした。



あのときの感覚は、一体なんだったんだろう。

今まで一度も感じたことのなかった…妙な感じ。

こんなに居心地が悪いのに、もう一度…もう一度だけ、あの感覚を味わってみたい…



恭一はしばらくじっとしていたが、布団の中でおもむろにごそごそと動き出した。

着ていた寝巻の帯をそっとほどき、両端を両手で握りしめた。




(…)




恭一はためらったが、ゆっくりと両端を交差させ、ひと思いに自分自身を締めつけた。



「うっ」



恭一は思わず苦しそうなうめき声を上げ、ぱっと両手を話した。



(何してるんだろう俺…)



そしてはあ、と大きなため息をついて、恥ずかしそうに目を閉じた。













「ハル、お手伝いしてちょうだい」





恭一が学校に行っている間、ハルはたいてい母親か家の女中の手伝いをさせられていた。

ハルは黙って母親の元へ駆けよった。




「ハル、旦那様の古いご本をね、処分してくれとお頼みされたの」

「…」

「ほら、これ全部。適当にまとめて積んでおけば、業者さんが引き取りに来て下さるそうよ」

「…」

「だから、ハルもこれ縛るの、手伝ってね」

「…うん」



ハルは小さくうなずいて、母親から細い紐の束を受け取った。

ハルは、思わずそれにじっと見入った。


「これ、ハル。早くなさい」

「あ、はい…」



ハルは慌てて、本を何冊か積み上げて、きれいに整えた。



「ここの部屋ね、旦那様が私たちのために空けてくださるそうなの。今のところは二人じゃ狭すぎるだろうって」

「…ふうん」

「ありがたいわよね、だから、ちゃんと感謝の気持ちを込めて、お手伝いなさいね」

「わかった」



トキはハルがしっかり返事をしたのを聞いて微笑むと、作業に戻った。

ハルは自分が今積み上げた本の束をもう一度整えて、細い紐を下から通した。

腕をくるくると動かしながら本に巻きつけていき、本の角で紐を交差させ、乱れないようぎゅっと強く締めつけた。



そのとき、先日自分が若旦那の体を縄で絞めたときの感覚が、体中に蘇った。



「…!!」



ハルは思わず紐を離し、ぼんやりと天井を見上げた。




なんなんだろうこれは…

なんだか体が熱い…




ハルは本の束をその紐で結び終えると、また本を束ねて同じように紐できつく結んだ。

しかし、今のような感覚…

いや、若旦那を締めつけたときの感覚は、得られなかった。



「…」

「ハル、手を止めずにやりなさい。休むにはまだ早いですよ」

「あ、はい」



ハルは母親にたしなめられて少し慌てた。

しかし、何度も何度も本を束ねて紐で縛っては、そのわけのわからない不思議な余韻を、こっそりと確かめていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ