表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪壊塵芥  作者: 黒漆
91/100

あおはなび

 上空と水面、その両方に火が弾けている、下の花火は写し鏡だ。空を彩る大輪の花が全て、予定に狂いなく咲き終わると、並ぶ夜店に寄せては返す人の波も落ち着きを見せ、次第に引いていった。


 私はこの寂しげな名残のような時間が好きだった。人の熱が引き、夜店も片付けられてゆく。買って身に付けたお面を頭に乗せて、汗をかくサイダーの瓶を手にとって残りを少しずつ喉に流し込む、浴衣の袖を風が揺らした。疲れてしまったのか寝息を立て始めた弟が、私の肩にもたれ掛かっている。


 手に下げているビニール袋の中には赤い金魚が四匹、広い場所を求めてか口をぱくぱくと開閉させて喘いでいた。何か急に可哀想だと思えて、私は起こさないように弟を横にし、ベンチを離れ電飾の提灯を潜ると、池の前に出た。金魚を自由にしてあげようと思ったのだ。


 すると、池に写り込んだ提灯明かりが増えているのに気がついた。どうして、と考える暇もなく、青い提灯の灯りが池の中心へと泳いでゆく。それらが、波一つない静かな水面の中央部で一つになると、音のない青い花火がぱんと咲いた。それは、数秒で光が中心から池の淵まで四方八方に散って消えた。なんだったのだろうと腰を下ろしたまま水面を見ていると、夜店の片付けた一区切り済んだのか、父親が傍らまで歩いてきた。


 お前は見るの初めてか、人死が多く出た年はこういう事が偶に起こる。あん人らも、祭りを楽しみたいんだろうな。客がいなくなってからでないと、出てこないのはきっと恥ずかしいからだろうさ。そう言って、柏手を打ち、手を合わせた。


 池に清冽な響きが万辺に渡る、賑やかさが嘘のように引き、冷やりとした風が首に触れた。弟がありがとうと寝言を呟く。再び片付けが始まり、僅かな喧騒が戻ると夜店の軒先に下がる風鈴が、夏の終わりを告げるようにちりりん、と鳴った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ