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怪壊塵芥  作者: 黒漆
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砂時形


 こういった事を市の方に、何度もお願いしなければならないのはとても心苦しいのですが。いえ、苦情ではありません。


 ご説明させていただいても中々信じてはいたたけず、こうして一念を通してここの所毎日、お願い申し上げているのです。


 海岸にね、入江の傍に、ほんの小さな浜があるのです。コンクリートの堤防下で、地元の人でないとわからない、静かな場所なのです。


 子供が遊べるくらいの小さな浜なのですけれど、そこに砂山ができるのです。


 何年か前にお地蔵さまが丁度いらした所なんですけれど、流されてしまいまして。


 新しくご尊体を用意しまして奉ろうかと、そんなお話もあったのですけれど、いずれ流されて同じことになるのではと、指摘を受けまして断ち消えてしまいました。


 自然で荒々しい、涼とした風景で灰色と黒、岩しかないようなそんな寂しい所にこう、こんもりと砂の山が気がつけば盛られているのです。


 散歩ついでに毎日見ていたのですけれど、日が経つにつれそれが少しずつ小さくなってゆくのです。もしやどなたかが、毎日来ては築いているのか、そんな風にも思っていました。


 本心を申せば、何か儀式めいた事がなされているのではないか、何か秘密があるのではないかと、そんな好奇心も抱いておりました。


 するとどうでしょう、数日が過ぎると、砂が全て流されて消えてしまった、違和感が消えて通常の浜に戻った、そんな日が来たのです。


 元々何もなかったのだから、当然なのですけれど、何故かとても気になって。するとその日にだけ、浜辺で亡くなった方がおられまして。


 暫くの間は砂ひとつまみ程の山もなかったのですけれど、不意に気がつけばできているのです。


 後は繰り返しでした。何度か砂をつぎ足し、砂のかさを増やしてみたりもしたのですけれど、無駄でした。目を離すと元の大きさに、小さく頼りない物に戻ってしまう。


 ですから、お地蔵さまをどうか、あの場所にまた戻していただきたい、その一心でこうしてお願い申し上げているのです。


 そろそろどうか、どうかお願いします、でなければ私、自分から砂山をつき崩してしまいそうなのです。


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