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怪壊塵芥  作者: 黒漆
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隠霊山


 ある人からこんな話を聞いた、彼はさる高僧からこの話を聞いたそうだ。敢えて険しい山道を超え、切り立つ岩場を渡り、その先にある滝に夜を通して打たれると霊験を得られるのだそうだ。


 なるほど山伏のような修験者ならばそういった修行もするのだろうと考えていると、どうもその地は霊山として敬われる様な場所ではないらしい。なぜかというと、修行を積んだ者でなくても簡単に見えてしまうからなのだそうだ。


 それを知らずに好奇心で簡単に越えてはいけない壁を超えてしまう者が居るから、正確な位置は秘密にされているのだとか。


 私はできるならば知りたいというと、彼は苦々しい顔でこう続けた。


 過去それで何の修行もせずに平地を渡り、滝裏から一晩過ごした男は発狂してしまった。何が見えたのか気になるだろうと聞かれ、私は素直に頷く。


 なんでも、暁と曙の間に滝の向うに霊の姿が見えるらしい、朝日が顔を出す前の僅かな時間に羽衣のように揺蕩い重なり合う人々が視える、その数が物凄い。それが目の前だけじゃなく、自分にも重なり合っていて、その中に埋もれているのに気づかされる。


 道に迷う修験者は到底救える数じゃないと悟るのだけれど、精神的な修練に耐え抜いたものでなければ、見たものの恐ろしさに押し潰されておかしくなってしまう。なぜならば、視えていないだけで普段から私達はその中に埋もれ、掻き分けながら生きているのだから、己から安寧の日々の足元を崩す事はなかろうよと話してくれた。


 それでも場所を知りたいかなと聞かれて私は頷くのを躊躇った。すると彼は妙に得心した顔で、それで正解だと答えた。


 続けて、私も知ってしまうと足が向いてしまいそうだったので結局聞くことが出来なかったんだと、正直に教えてくれた。少し安心したような、それでいて残念な気持ちになる。


 しかし私はなんとなく、知らないという割に何があっても落ち着き払い、妙に超然とした存在で有り続ける彼は、もしかしたらその場所で何もかもを見た上で、こうして生きているのではないかと考えている。


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