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怪壊塵芥  作者: 黒漆
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人車一体


 なんつうか、趣味以上のものになってたんじゃないかと、あいつ稼いだ金、全部つぎ込んでましたから。


 ハンドル、サスペンション、ブレーキ、エアロ、タイヤに始まって、車体を軽くするとかでボンネット、ドアや座席まで変えて、シャーシにまで改良加えてさ。あそこまで行きゃ、車というより家みたいなもんでしょ。


 それで、純製から遠ざかる程に自分との一体感が増すって言ってたな。なんでも、タイヤが路面に吸い付く瞬間や、ちょっとしたエンジンのトルク動作変化、車体のぶれとブレーキの噛み具合、そんな挙動全てが自分の体で体感できるとか。


 凄いもんでしたよ。異常があればすぐに察知して、何か起こる前に気がつくんだから。例えば車にちょっとした悪戯で缶一つ放り込んだだけで重さが違うとかなんとか、普通そんなのわからないでしょ。


 だからなんかなあ、ほら、人馬一体って言葉があるでしょ。お互いに心を通わせた人と獣が神憑り的な動きを見せる、みたいなさ。そんなのと同じなんじゃないかって。あいつ、足骨折した時にタイヤパンクしたとかそんな事自慢してましたからね。


 そいつ、死んじまったんです。車の事故で、そう思うでしょうけど違うんだな、あいつは体に無理かけ過ぎたんですよ。昼は会社で夜は車、一日中休まず走ってましたからね。


 俺は昔っからそんなだったもんだから慣れいて、大丈夫だろとたかくくってたんですけど、やっぱ年齢的に体がついてきてなかったのかな。凄く痩せてきて見てくれが明らかにやばくなってきた、休めって周りの人間に煩く言われてたはずなんですけどね。仕事中急に苦しみだして、倒れちまってそれっきりですよ。


 そんで、あいつの車は仲がいい友人が引き取ってくれるって話でまとまりましてね。いや、俺じゃないですよ。俺はあいつを見てるだけで充分でした、趣味も度を過ぎるとどうもね。


 昔は好きだったんですけどね、逆に褪めちまいましたよ。それで引き取りが決まったんですが、いざ仕事場の駐車場から移動させるとなったらなにかがおかしいんですよ、車全体が焦げ付いてまして。


 それで確認してみたら内装からエンジンルームまでどれもこれも焦げ付いてて、誰も気がつかなかったってのもおかしな話ですが、結局全部おじゃんでした。だから俺たちはきっとあいつが連れてったんじゃないかなんて言ってたんですけどね。


 なんだか寂しくなっちまいましたよ。だけどちょっと引っ掛かりがあるんです、もし、もしですよ、勤め先の同僚があいつの車に何か嫌がらせか何かで弄っていたとしたら、寧ろあいつは車に連れて行かれたんじゃねえかって。


 まあそんな話、あんま大声じゃ言えやしないですけどね。


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