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怪壊塵芥  作者: 黒漆
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重篤の報せ


 今はもう働いていません、私も家庭を大事にしようと思いまして。だからこういったお話ができるんです。


 私の働いていた病院では、看護師のお仕事は夜勤、準夜勤、通常勤の三交代勤務で行なっていました。8時から16時、16時から24時、24時から8時を月にサイクルで分けて働いていたんですが、やっぱり深夜帯出勤が一番辛かったです。


 業務はやはり昼の勤務が多いんですけれど、出勤している先生や看護師の人数も多いですから、何かあっても対応がスムーズにできますからね。夜は絶対的な人数が少ないですから、不測の事態が重なると本当に辛いです。だからこそ、耐えてゆける人は本当、限られていると思います。


 それで、なのですが、真夜中に無人の部屋で押されるナースコールみたいなものはどこの病院でもあると思うんです。


 それくらいなら私も耐えられるんですけれど、あいみちゃんには本当に困りました。私も勤め始めの頃は姿を見ることもなかったんですけれど恐らく一度、目に留めて心を許されると姿を見られるようになると思うんです。


 院によっても変わるとは思うんですけれど病室は重病患者、軽病患者、隔離病患者に分かれるじゃないですか。そこにまた個室、相部屋があるんですけれど、ナースステーションには入院されている患者さんの氏名とコールランプがついているホワイトボードがありますよね。


 そこにマグネットが用意されていて、予断が許さない患者さんにはオレンジ色のマグネットが付けられていました。でも他によく見なければわからないんですけど、日によって赤のマジックで小さい記が付けられていることがあるんです。


 その日に限って勤務の人数が増えて、おかしいなと思っていると、マークをつけられた患者さん、本当にその日に逝ってしまうんですよ。少し怖いなと思って聞いてみたんですけど、看護師長も誰も知らないの一点張りで。


 あいみちゃんは重病患者の相部屋に良く現れるんです。大体患者さんの顔を覗き込むようにしているんですけど、後ろ姿しか見えないんです。手術服に剃り上げた頭、背が小さいからベッドに膝をついてじっと見つめていて、私初めて彼女を見かけたときに、あまりに普通と変わらなかったものだから、どこかの病室の患者さんだと思ってしまったんですよね。だから、だめじゃない、危ないでしょうって話しかけてしまったんです。


 そうしたらベッドの患者さんに顔を向けたまま、あっという間に下に潜り込んでしまって。どうしたの、でてきなさいって下を覗いたら、誰もいないんです。


 するとその日、ベッドの患者さんが亡くなってしまって、それで気がついたんです。あのマジックってそう言う意味なんだって。


 どうも、誰にでも見えるわけじゃないみたいなんですよね、だからきっと私のシフトと違う時間帯の看護師さんで視える人がいるんじゃないかって、あいみちゃんって名前も看護師長がこぼした言葉を聞いて知ったんです、今日あの人のベッドにあいみちゃんが現れたらしいから用意しておいてって。


 これってきっと、病院でも解っていると思うんです。あいみちゃんて、始めは女の子で愛美ちゃんなのかと思っていましたけど、多分、相身互あいみたがいのあいみなんです。


 だから引き込んでるんじゃないかって、それに気がついてしまって転院も考えたんですけれど、良い切欠だと思って辞めてしまいました。


 本当の事を言うと、あいみちゃんにも手をベッド下から触れられてしまいましたし、近づいてきているので顔を見てしまいそうで怖かったんです。



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