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怪壊塵芥  作者: 黒漆
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顔霊射視


 後で調べて知ったんすけど、あれってシュミュラクラ現象って奴だったのかなって。


 人間は三つの点が存在すると顔に見えてしまうって奴です。大概の心霊写真ってそれで説明がつくらしいじゃないすか。


 でも、そう言われてもやっぱ納得いかないっていうか、引っかかるものがあるんすよね。それだけじゃあんな怖え事になりゃしないって。


 どいつもこいつも若い時って無茶するもんでしょ。


 自分もその口で、いきがってた仲間連れて廃墟まわってガラス割ったりとか、スプレーでネームつけたりとか、下らねえことしてたんすよ。


 そんで、ある時後輩が夜逃げしたばっかの家があっから行ってみねえって誘われて。そこの家の親父が家で首吊ったって噂だったんすけど。ついてみるとホント若干暗いってだけで普通と変わんねえんすよ。


 まあ、玄関先の荒れ方だけ酷かったんすけど、どうせ誰か俺らより先に荒しに来たんだろって、そんで庭から木戸開けてガラス割って家に入ったんすけど、ちょっと引くような光景だったんす。


 なんつうかな、人の生活感みたいな妙な感覚が残ってて、そんで俺、何だよ、まだ誰かいんじゃねーのっていったんすけど、こんだけ騒いで出てこねえんだからいねえだろって仲間が意地はって。


 仕方ねえから片っ端から有るもんぶっ壊したあと帰ったんすよ。なんだ、結局何もねえじゃんて笑ってたんすけど、それから一夜明けたら俺もなんすけど、どいつもおかしくなっちまった。


 なんなんすかねあれは、とにかくなんでもかんでもおっさんの顔に見えちまう。木の葉とか、アスファルトのでこぼこ、床の模様、天井の染み。なんつうか風船みたいな顔にでかい目玉とナメクジみたいな舌が飛び出てる。


 気が狂っちまうと思っちまいました。一緒に荒らした仲間もおんなじで、目を潰しちまったやつもいたんす。


 俺はやべえと思って病院行こうとしてバイクでこけて、肋骨何本か折った時、病院に駆けつけた勘当同然の親父に洗い浚い話してなんとかして貰ったんすけど。そうじゃなけりゃどうなってたか、親爺にゃ今でも頭上がんない。


 どうやったのかは聞いてないです、俺も目を開けなくて、なんか大変みたいだったすけど、暫くして顔、見えなくなりました。


 仲間はそれから合ってないんすよ、気まずいでしょ。それから先なんてどうせろくなことになっちゃいないんですから。


 それなりの覚悟無きゃ、肝試しなんて止めたほうがいいですよ、後悔してからじゃ遅いでしょ。


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