表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪壊塵芥  作者: 黒漆
71/100

より怖い


 桜井さんは視える人だという。


 余り大っぴらに認めないのはその手の話で相談に乗って欲しいと言われるのが嫌だからだそうだ。


 何故なら、視えるのと、事態を解決に向かわせる力があるのとでは大きな開きがあるからだ、元より私は視えてしまうだけで、望んでそうしているわけじゃない、と桜井さんは言った。


 なぜ私が彼女の特別な力を知り得たかというと、彼女の視線が時折おかしくなるからだった。


 失礼を承知で、もしかしたら何か見えているんじゃないのと聴いたところ、話を広めないならと教えてくれた。


 付き合いも短いわけではない、多少なりとも信用があるから教えてくれたのだと思う。だからこの話は彼女の身辺に触れる事柄は割愛する。


 さて、これまで幽霊で一番怖かったものは何かと、私が聞くと彼女は変わった答えを示してくれた。


 街中でその手の物が視えるのは珍しくない、けれど、本当に怖いのはそんな幽霊達ではない、どんなに無残な姿であっても、全身を見せている霊は怖くないのだと彼女は言った。


 「何ていうか、想っている事が明確なんじゃないかな。痛みを分かって欲しいとか、寂しいとか、自分を知って欲しいとか、いつの事かはわからないけど、そういう念みたいなものが強い人ほど良く視えるのだと思う」


 見え方も様々なのだそうだ。顔がはっきりしなかったり、全身はっきりとしていて見間違えてしまう程明確な姿だったり。


 人かそれ以外かどちらか判断がつかない場合、彼女は視線をずらして観る癖がついてしまったそうだ。


 「視界の端に触れると、何故か透けて見えるのよ。まあ大概はその場から浮いているから解るんだけど、時折巧妙に人の中に混じっていてわからないときがあるの。そういうのに限って視えていない人も何か感じるものがあるのか避けて通るんだよね」


 それ自体が凄く怖い事だと私は思う。それなのに彼女はもっと怖いものがあると言った。


 「部屋のさ、タンスとか机、テレビの裏なんかに、本当に偶に体の一部が出るのよ。片腕、背中、後頭部、足の裏。これが何故か妙に生々しい体の一部で出てきて顔は絶対わからない、というか出てこないのね。それが出ると本当、突然に嫌なことが起きるの。親族が怪我をしたり、家の近所で人が轢かれたり、帰宅中に電車で人身事故が起きたりね。町中に居るような自分で理解できるものは良いの。けど、ああゆう訳が分からないのは本当に怖いよね。突然の宣告みたいなものでしょう、後で何が起きるのかわからないからぞっとする」


 そう言った彼女の視線が不自然に別の方向へと動く、背筋が冷やりとした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ