表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪壊塵芥  作者: 黒漆
70/100

誘い紅葉


 色鮮やかな濃淡の異なる赤や黄の葉海が、中心に流れる川を抱くように両側に広がっていた。同じ世界とは思えないような景色で、ついため息を漏らしてしまう。


 川には小さな段差がいくつも重なり、小さな滝を作っている。白い飛沫の下に緩やかな流れが有り、透けて見える無色の川底を何枚かの落ち葉が彩り、自然の美しさを一層際立たせていた。


 「これ、どこで撮ったんですか」


 「秘密、旦那に教えたら駄目だって釘を刺されてるの」


 槇島さんは懐に手を入れるとそれ焼き増ししたやつだから、欲しけりゃあげるよと嬉しそうにしていた。


 私と槙島さん、それに旦那さんは写真を撮るのが趣味だ。休日は三人で山や川、海で主に自然の風景を写真の中に保存している。


 とはいえ、職業が違うので休日が完全に重なり合う訳ではない。だからこそ、こうして時折、自分が探し出した絶好の景色を見せあっている。


 「簡単に移動できる場所にこんな穴場、あるんですか?」


 「ここはそうだね、バスと電車の時刻さえ合えば日帰りでも行けるよ」


 「凄いじゃないですか、じゃなんで秘密なんですか」


 「ここさ、温泉地で地元では秘密でもなんでもないんだけど、別の意味でかなり名が知れてるの」


 別の意味とは何だろうかと考えても一向に答えが出てこない、それにこれだけの景色が堪能できれば、逆に名を売れそうなのに。


 「高い橋と川と言えば、あれしかないでしょう」


 「ああ、そうか、自殺ですか。でも危険な場所ならこれまでも二人で行ったじゃないですか」


 「ここはね、一人で秋に行くと危ないんだって。私も目にするまでは本気にしていなかったけど、あれは実際凄いよ」


 「凄いってどんな風に凄いんでしょう」


 「写真に緩やかな流れの場所があるでしょう、川の中に幾つか岩が飛び出していて、そのへんの水流が特殊なの。日本庭園の枯山式庭園てあるでしょう」


 「ああ、京都で見ました。玉砂利で模様を描いて、波紋に見立てている庭ですよね」


 「あんな感じで、水の中に波紋があるんだけど、そこに落ち葉が流れ込むとね、丁度手をこまねいているように見えるの。これが本当に綺麗でね、風景に飲まれるって言うのかな。だから、一人で行くと飛び降りたくなる」


 「そんな事本当に、あるんですか」


 「私は旦那と一緒だったから大丈夫だったけど、実際一人その週に飛び降りようとしたって」


 「え、大丈夫だったんですか」


 「すぐにタクシーの運転手さんが気がついて、助けに入ったから良かったんだけど、その人、ファインダーを覗き込んだら、川一面の紅葉が誘うように踊っていたんだって唸ってたって。だから実際は自殺じゃなくて、飛び降りさせられているだけなんだよきっと」

 

 それを聞いて私は少し残念に思うものの、その場所を詳しく教えてもらうことを諦めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ