禍去からの手紙
卒業十周年の日、俺たちは校庭の隅に埋めたタイムカプセルを掘り起こした。残念ながら完全とはいかず、缶は腐食気味で土が入り込んでしまっていたが、ビニールで包んでおいた中身の大半が無事だ。
色あせたテープを剥すと、懐かしい記憶が次々と顔を出す。集合写真を見て一人だけ思い出せない顔があった。これって誰だったか。
缶から全てを取り出すと、底に何故か破れかけ土に汚れた茶封筒が残り、それを一人が取り上げると中から手紙らしきものが一枚落ちた。
拾い上げた俺が、余興だと読み上げ始める。
拝啓 お世話になりました皆々様へ、
いかがお過ごしでしょう。あれからもう何年も経ち、あの夏の出来事も夢のように朧気なものになりましたでしょうか。
皆々様と別れ、私は元気でやっております。子供であった私も様々な流れを経験し、より大きな存在と相を交える内にこうして立派な人格を築くに至りました。あの頃互いの手で作り上げた秘密基地、山の森の中に廃屋から運んだ木材と、うち捨てられたブロックによって作った粗末なものでありましたが、あの場所で過ごした時間は得難い体験でありました。
ビー玉やパチンコなどのおもちゃ、夏の日に飲みあったラムネの味、今も忘れてはおりません。
いつかまた皆々様と顔を合わせる機会があること願い、こちらからご挨拶に向いたいのはやまやまなのですが、あの日抱いた悔いは鋲のように私に刺さり、この場所への執着が動こうとする私の体をがんじがらめにするのです。
ですから、こうして私のことを思い出していただくために手紙をしたためました。そうして繋がりが持てれば、必ず私は皆々様の元へとお礼を差し上げに向かえる事でしょう。楽しみにしておいて下さい。積もる話や、お返ししたいものも多くあります。それでは皆々様、またいずれお会いしましょう。 敬具
途中で止めようとしたが声が止まらなかった。俺と何人かの顔から血が抜けて体がぐらりと傾く。そうだ、卒業数日前、俺たちはいじめていたあいつを最後の思い出だって手足を縄跳びで縛り、秘密基地に閉じ込めて帰った。
ちょっとした遊びのつもりだったんだ。翌日許してやるかと開きに行ったら、土砂で秘密基地は潰れてて、誰も本当のこと言えなかった。俺達、話し合って忘れたほうがいいって、それっきり。
思い出したくない、それなのにあいつの名前は、確か……




