赤服の来訪者
男の子に髪を引っ張られている児童が目について私が仲裁に入り、二人を引き離す。
「泣いたって信じてあげないもん、嘘つき」
「嘘じゃないもん」
大声を上げて女の子は部屋の端へと泣きながら駆けていってしまった。
「だめでしょうゆうきくん。こんな事してゆみちゃんを虐めちゃ」
「ゆみちゃんは嘘つきだ」
ゆみちゃんは母子家庭のせいか、鬱ぎがちなのだけれど可愛いのでよく男の子にからかわれる。
「なんでそんな事いうの?」
「だって毎日サンタさんが来るっていうんだもん」
「本当かもしれないじゃない」
「嘘に決まってるんだ。プレゼントもくれないサンタさんなんて」
「ふうん、プレゼントもらえないんだ、だけどサンタさんなの?」
「そうなんだって。ゆみちゃんのお家の前の電信柱を登って、お話をしにベランダまでくるんだって。それでね、もう少ししたら良いところに連れていってくれるって言うんだって」
それを聞いて、変質者なのではと私は焦った。
「ちょっと、それってもしかして、おかしいわね。先生ゆみちゃんに聞いてみるわ」
「ううん、きっと教えてくれないよ」
「え、なんで。ゆうきくんには教えてくれたんでしょう」
「えっとね、大人の人には教えちゃダメだってサンタさんに言われたって」
「うん、それは本当に危ない」
「危なくないよ、だって嘘だもん」
「ゆうきくんはなんでゆみちゃんの嘘だと思ったの?」
「うんとね、サンタさんおひげの他は真っ赤なんだって。顔とかもお鼻やお口も無くて全部真っ赤だって、そんなのサンタさんじゃないもん」
ゆみちゃん、ありがちな悪夢でも見たのかな、変質者じゃなければいいけどと思い、部屋端を見る、と、ゆみちゃんの背後、窓向うに頭を轢き潰され、顎から骨が突き出ている真っ赤な人が立ち、こちらを睨みつけていた。




