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怪壊塵芥  作者: 黒漆
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音因源行


 理由は分からない、現在住んでいるマンションで夜の一定の時刻になると、窓の外から水の中で金属を打ちつけるような音が聞こえる。


 私が暮らしている部屋の階は四階で、窓の外には何もない。


 音のタイミングを計り、その瞬間に窓を開けて外を眺めても、音源らしきものは見当たらないし、何が原因なのか全くわからない。


 どうやら同階の住民にも聞こえているらしく、それが理由なのかこの階の値段だけが安いらしい。地元に昔から住む人に聞いても、詳しくは解らないと曖昧に会話を打ち切られ、未だもってはっきりせず、他に苦になる所は無く、心地悪くない場所なのだが、住んで何年経っても言い様のないしこりが喉元に残ったままになっている。



 鉱山へと立ち並ぶ鉄塔が解体される、長年土地を支えてきた鉱山が閉山するそうだ。


 数日前からゴンドラのような機械は止められ、今はもう動いていない。張られたワイヤーも巻き取られていった。


 それなのに奇妙な事に、時折夜になるとワイヤーが軋む音が耳に触れる。それと共にくぐもって鈍く響く音が。


 あれはなんなのだろうと親父に聞いたが、詳しくは教えてもらえなかった。年々聞こえなくなってきているからいつかは気にならなくなると言われたものの、気にするなと言われても無理だ。


 なんでもこの土地で鉱夫が働いていた頃の名残なのだそうだ。



 ワイヤーの下を勢い良く、黒く薄汚れた鉄台車が下ってゆく、入れ替わりに麓から、空台車が登っていった。


 鉄索てっさくと呼ばれる運搬装置は鉱山近くまで続いている。


 鉄の台車に掘り出した鉱石を入れ、重量を加えてワイヤーで下に流すと、替わりに軽い空の台車が上へと送られる仕組みだ。


 僅か一年ほど前、坑道内で落盤事故が起き、亡くなった鉱夫がこの鉄索で麓へと運ばれた。


 岩盤に押しつぶされ、人と判別が出来るかできないかという様な見るに耐えない有様で、できるだけ人の目に触れないようにとの配慮からだったそうだ。


 それ以来、何も入れていない台車が空を駆けると誰一人、何一つ乗せていないのに内側からごんごんと拳で鉄板を叩く音が響くと噂になった。


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