亡猿害
ちょっと聞いとくらい、こないだ坂田の六さ。さんざ世話んなっといて、見苦い事言ってけつかる。
ろくなもんじゃあない、畑の猿追いやってやったっづのに。ちったあ懲らしめてやらんと奴ら調子づくからてんで、手伝ってやったのに。
何したんかって? 猿の皮下げてやったんだわ。鉄砲ぶちに毎年獣害増えてるってことで山へえって猿撃ってもらってるんだ。
でも奴ら気味悪いってんで鍋にはしねえ、それをおらが貰ってるんだ。皮ひん剥いて棒に括りつけて畑まわりにおったてる、そうすりゃ獣よけによく効くんだ。
おら家の畑にはだから猿が入んねえ、馬鈴薯も茄子も元気なもんさ。
それ見てあいつがおらの分もこさえてくれって言うもんだからくれてやったら文句ばっかこく。
畑に血だら真っ赤の猿が来ただの萎びた猿子が傍で泣くだの、おらは一度もんな事無かった。
そんで文句言ってやろうと家さ行ったら全部ほっぽらかして居なくなっちまったんだと。
それでおめさのせいだって親爺が怒ってな、んなこと言われてもおらのせいじゃ無いだろうに。
むいたら食わなきゃ供養になんねとか、わからんこと言って。おらも流石に猿の肉は食わね。けども所詮畜生、べちゃっても(捨てても)ばちは当たらねえ。
おめさも気いつけるんだな、付き合う人は選ばねえとろくなことにならん。はあ、おら家の屋根に猿が居るって、いつもの事だ。
バカっ面して、人をおちょくってんだ。こんな所、食うもんも無いのにわざわざ来てけつかる。
真っ黒い猿が居るって? 気にしてたら畑なんてやってられん、獣なんぞはったつけたらいい。
はあ、猿から蝿んぼが大量に飛んだ? ああ、そうだか、どうりで最近蝿が多いと思ってたんだ。中に赤い猿が? 馬鹿言うなさ。




