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怪壊塵芥  作者: 黒漆
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びんのなかみは

 なんで空きビンを並べてるのかって、そらちょっと込み入った理由があってな。


 最初は一本だけやってん。まあウイスキーの空き瓶なんやけど、ビンの形が気に入っててな。


 飲み終えた後も棚の中に置いて飾ってたんやけど、こんな話誰も信じてくれへんおもて、ずっと黙っとってん。


 せやけど、この間酔った拍子に緩んでな、口からつい漏らしてしもて、そしたら相手も見たことある言うやんか。


 そんで度々機を見ては知り合いに聞いて回ったとったら、案外見とる人が多いて気がついてな。


 ただ、僕の場合は他の人らとは違ごて自由に動いてるわけやあらへんのよ。そりゃそやろな、ビンの中におるんやから。


 どんな格好してるかやて? そやね。大体みんな言うこと同じなんやけど、中年サラリーマンのおっさん姿やねん。


 腹が出てて頭が薄い、ワイシャツネクタイスタイル。そのおっさんがな、時折ビンの中に現れては何かしとんねで。


 新聞を読んだり、飯を食べたり、ビンの壁を内側からボクシングスタイルでどついたり。


 なんやごっつけったいなんやれど、ビンの口は小さいからどうやって物を持ち込んでんのやとか、どうやって入ったんやなんて考えるのはあほらしいから止めたわ、聞けるわけでなし、わかるわけあらへんもんな。


 しばらくずっと見て見ぬふりをしとったんやけど、他にも見てる人がいる聞いたら興味が湧いてきてな、次に現れたらビンを振ってやろと考えてん、反応が見たなって。


 そんでこの間、丁度夜中に姿見せてな。ちゃぶ台にロウソク立てて飯食うてたんやけど、戸棚の扉を開けてビンの口を掴んだらそのおっさん、僕にものごっつ嫌そうな顔してん。


 でもそこまで行ったら止める訳にいかへんやろ、やから思い切り振ったったらビンの壁面にべったり張り付けられて、その顔が妙におもろくて、腹が捩れるほど笑ろてしもてん。


 それっきりビンの中からどうやって出たんか消えてしもて、それから一切見かけられへんようになってもうた。


 そうなるとあの嫌そうな顔がどうにも忘れられへんねん。なんや折角住みやすい場所を手に入れとったのに、それをあかんようにしてしもたんやないかって、けったいな話やけど今じゃちょっと反省してる。


 せやから空きビン並べて、いつでも帰ってこれるように用意して待っとんねん。けどなあれだけ笑ろてしもたから、まあ戻ってはこん思う。


 そないな事で、今じゃ趣味みたいなもんやね。

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