表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪壊塵芥  作者: 黒漆
41/100

喰い黴


 こんな生活続けてりゃ、黴なんて珍しくもなんともありゃしない。


 びたパンやら握り飯なんかは、そんところだけ取り除きゃ食べられる。


 腹を壊すのはぁ最初のうちだけだ、慣れりゃあなんでも旨くなる、そういうもんだ。


 けどよ、ありゃあ驚れえた。人間の一番汚ねえ場所って知ってっかい。尻でも足の裏でも手のひらでもねえ、口なんだとさ。


 つまりぁあ、あれよ、下よりも上の口の方が汚ねえのな、なんでも雑菌が人間の体んなかで一番多い場所なんだと、それだからなんかなぁ。


 そんでな、カン爺ってえ呼ばれてる爺さんがいてな。なんでも名前が字は知らねえがカンジっていうらしく、まあ生計立てんのもせこせこ缶拾いやっとったからそう呼ばれてたんかもわからんが、そんな爺さんがいたんだよ。


 まあこんな生活続けてりゃ、ある程度の顔は覚えるし、お互いの縄張りもあるからな、仕事ってえ程でもねえが、稼ぎの方法が重なるのも問題だ、粗大ゴミの回収、雑誌の拾い歩き、金属拾いにまあ万別さ。


 中には俺みたいになんにもやりゃあしないろくでなしもいるんだけどね。つったってこんな場所にはろくでなししか、いやしないと言われりゃそれまでなんだが、そりゃあまあ別の話よ。


 そんでその問題のカン爺がさ、どこかの墓で中身入りのカップ酒とお茶の缶をくすねてきたんだ。


 詳しい場所は教えちゃあくれんかったけどな、毎日持ってくるもんだから、こりゃあ穴場があるんじゃねえかてなもんで、俺はつけようとしたんさ。けどよ、何度やっても途中で見失っちまう。


 やっぱり詳しさは野病歴の長いカン爺にゃあかなわん、偶に酒をくれたりするもんだから、まあいいかって諦めたが。けどな、ある時から奴さんの口に黴が生え始めたんだ。


 本人はわかっちゃあいないらしいが、こう、口を開くと緑の粉みてえなのが山盛りできてて、そいつが次第に酷くなってな、それにつれ、カン爺も顔が痩け、髪も抜けちまっていった。その上ひでえ臭いがすんだ、残飯なんかに慣れてる俺からしても嗅ぎなれないひでえ臭いが。


 そしたら誰も気味悪がってカン爺の相手は受けなくなってな、しまいにゃ姿も見かけなくなっちまった。


 俺ゃあおおかた病院にでも担ぎ込まれたか、居づらくなって他に移ったと思ってたんだ。けどこないだ予想もしねえ所でみつかったんだわ。


 仲間が夜通しカン爺の声を聞くつうんで、そいつの住処の周りを探してみたのさ。してな、テントの後ろに、邪魔なあおい石があるっつうんで退かそうとしたら、そいつがカン爺だった。


 拝むように丸くなって硬くなってたうえに、すっかり全身黴びちまっててわからなかかったんだな。何だろうなあ、あれ。背中が何だか、一部黴の生え方が違ってな、漢字みたいに見えたんだわ、まるで墓石みたいでね。


 それがさ、読めるんだけどよ、神路って字なんだよ、出来すぎてるだろ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ