幽体離剥
「最近大人しいじゃん、どしたの? 何かあったなら話してよ」
「空を飛べるようになったんだ、みんな鳥籠の中に押し込められているだけなんだ。飛ぼうと思えば飛べるのに、飛べないって初めから否定してるから飛べないんだよ」
「何言ってんのそんなの無理に決まってるじゃん、良い、人間には羽がついてないんだよ。死にたいの?」
「だから、その考え方が駄目なの。別に生身のまま飛べるなんて言ってないでしょ」
「生身のままって、なんだやっぱり自殺願望じゃん」
「違うの、幽体離脱っていうの? 体から抜ける方法、教えてもらったんだ」
「ねえ大丈夫? そんな事言って騙そうとしてるでしょ」
「違うよ、胸の上でこう両手を交差させてね肩を押さえて眠るの、後は曲を聞くだけ」
「曲ってなんの? そんなのできるわけないじゃん」
「自分の好きな曲、一番リラックスできる曲だよ。後は体から抜けたい、離れたいって思い続けるだけ」
「ふうん、で、出られたんだ」
「そう、凄かった。自分の体が目の前にあってね、見下ろす感じ」
「面白そうだね、それで空を飛ぶってどんな感じなの」
「何ていうか、水の中を泳ぐ感じかな。水よりはもっと抵抗があるけど、凄いんだよ。生きている人が輝いて見えるんだ」
「光ってるの? なんだろ、生命力みたいなものかな。でもさ、飛んでるのって一人だけなの? 他に誰かいたりしない」
「沢山いるよ、勿論人もいるけど。お互い話せないの。それにもう人の形じゃないのとか、なんて言うんだろ、色んな生き物が混じり合ったのとかが、沢山飛んでるの」
「それ怖いよ。いくら気持ちよくたって、そんなのいたら飛べないって」
「そうだよね。体から離れすぎるとダメなんだ、掴まれて持っていかれちゃう」
「待って、じゃあどうやって体に戻ったのよ」
「私の体、無くなっちゃったの。だからね、今一生懸命あなた達の事見て、憶えてさ、やっと体を手に入れたんだ」
「何それその嘘。止めてよ、気持ち悪い」
「ごめんごめん、嘘だって。でも幽体離脱、知たいでしょ。大丈夫、友達も沢山いるから」




