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怪壊塵芥  作者: 黒漆
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さくらわかれ


 散った桜の花びらを集めて、ハンカチに包み込み、持って帰ると庭に撒いた。


 今年の冬、親友のまるは遠い世界に旅立った。


 小学生時代からずっと一緒に生活してきたまるは、空を舞う雪や花びらが大好きで、目に入るとすぐに追いかける。


 蝶や蜂も追いかけて、鼻頭を刺されて大騒ぎになったこともあった。それでもまるは飛ぶものを追うことをやめなかった。楽しくて仕方なかったんだろう。


 そんなまるも去年の秋くらいから体調が悪くて寝たきりで、冬の間は家の中から寂しそうに舞う雪を眺めていた。


 最後まで好きなものを追いかけ続けたまる。


 だからあたしは、春になり桜をみかけたら、どうしようもなく寂しくて、近くにいてくれると信じたくて、馬鹿だと思っていても行動を止められなかった。


 ハンカチから取り出した花びらを手に掴み、あたしは放り上げる。


 ふわふわと舞う花びら、それが不規則にふわりと持ち上がった。


 まるだ、見えないけれどまるはここに来ている。


 ふさふさした尻尾が振られているのが目に映るようで、あたしは集めた花びらがなくなるまで、見えないまるがいる場所に撒いた。


 ふわふわ舞う花びらが、一直線に持ち上がり、まるが走っているのがわかる。


 庭の中をくるくる回り、最後に庭木がばしんと揺れて、葉が数枚落ちた。


 もう一度、そう思って花びらを拾い、撒いたけれど二度とまるは現れなかった。


 あたしは最後の挨拶まで間が抜けていたまるがおかしくて、久しぶりにまるのために泣いた。


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