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怪壊塵芥  作者: 黒漆
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転倒開店


 はい、ええ、この稼業も長いこと続けてます。最近じゃあ新参者が増えすぎて商売あがったりですよ。


 お客さん、最近の人にしちゃ珍しい。


 ほら、今時話しかけられたくないって人、多いでしょう。


 お客を乗せて黙り決め込んで、いや、こっちも楽でいいんですがね、時折寂しくなるんですわ。まあ、悪酔い客に絡まれるよりは静かな方が良いですがね。


 成程、話しが仕事の商売方ですか、ネタになる話ねえ。


 こう言っちゃなんですが、ありきたりなものばかりですよ。枠型にはまった、ほら、夜中に人気のない道で拾った女性の客が、いつの間にか消えていて座席が濡れていただの、墓地まで送ってくれと言われて、おかしいと思いつつ、目的地についたら消えていた、なんて私ら泣かせの怪談です。だってそれじゃあ儲けにならないでしょ。


 え、怖くは無いのかですって? まあ怖くないわけじゃあないんです。でも長年こんな商売してると、おかしな人間の方がもっと怖い。


 客を拾ったらナイフ片手にこっちがゆすられる、なんて事も珍しくない時代ですから。


 ああ、そう言われればひとつ思い出しましたよ。怖いというより不思議な話になるのかな、四、五年前なんですが夜の駅前で、くたびれたサラリーマンを一人拾いましてね。


 乗せたは良いんですが、家までの道中で酔い覚ましに郊外の麺屋に行きたいなんて言いまして。まあ、正直面倒だなとは思やあしましたが、贅沢は言ってられませんから、店まで送りまして、そこまでの料金を払って貰ったんです。


それで待ってはいたんですが、何か引っかかったんですわ。こう、何か忘れている気がしましてね。すると、麺屋の照明がこう、バチバチっと何度か点いたり消えたりしたんですわな。で、あれってなもんです。はっとして、そういやここは先月潰れたばっかりじゃないかって。


 気がついてみたら真っ暗な店舗の前で馬鹿みたいに駐車してる自分がいました。まあ、確かに料金は払って貰ったからこっちとしては、文句ありません。それから偶に、深夜麺屋の前を通ると、電気が点いている日があるんですわ。


 そんなときゃ駅前に行くと何故か客が拾えるんだ。まあ、今じゃ新しい店が出来ちまって、そんな幸福にも有りつけやしませんけどね。


 でもあれ、中に入った客はどこに行っちまうのかな、それがわからないんですよ。まあ、ご内密にお願いしますお客さん。知らない方が楽でしょう、どうせ考えたってわかりゃしないんだそんなこと。


 ところでお客さん、腹減りませんか、実は飯が旨い場所を知ってるんです。ちょいと変わった時間にしか商売してない店なんですが、話の種に行ってみちゃあどうでしょう?

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