矯正救助
「いてて、ったくロクなもんじゃないっすよ」
「あれどうしたのお前、脚なんか押さえて。事故ったか?」
「まあ懲りたというか、聞いてくださいよ」
「面白そうな話だな、聞かせろよ」
「うちの学校ちょっと変わっているんすよ、屋上にフェンスがないんす」
「え、だってそれじゃお前、困るじゃん。飛び降りちゃう奴なんかがいたらどうすんの?」
「そうなんすよね。どこの学校もそうだと思うんすけど、一つや二つあってもおかしくないですもん」
「だよなあ、考えすぎる奴の多い場所でもあるだろ」
「俺の知ってる限りでもいじめられてた奴、いましたからね。でも不思議と噂があるだけで飛び降りたって話、聞かないんすよ」
「へえ、面白いな。でも、それって単に開かずの間みたいなもんなんじゃねえの? 鍵かけられてて屋上にでられないとか」
「それが、普通に入れちまうんす。まあ、一応行くなとは言われちゃいるんすけど、関係ないすよ。実際結構登ってる奴多いですし、まあ俺も含めてですけどね」
「それで、わざわざ勿体ぶってまでなんでそんな話振るのよ」
「いやあこれが、こないだある奴に聞いちまいまして。実は知り合いに飛び降り決起したのがいたんです」
「ふうん、お前の知り合いで? お前がいじめた奴じゃねえの?」
「あ、やっぱわかっちゃいます? まあ冗談ですよ。お前試しに飛び降りてみろよって、死にたいとか言うから背中押してやったんです」
「ひっでえな、それでなんで問題にならなかったんだ」
「縁に立てばわかるんす」
「は、どういう意味? お前が立ったわけじゃないだろ」
「掴まれるんすよ、足を。その場にいる奴全員ね。その上外から突き戻される。だから、飛び降りできない。笑っちまいますよ、しかも俺の足の方が強烈に握られたんす」