第2話
そんな、そんな事があるはずは……っ!
ヴァルハードは一度目を閉じ呼吸を整え、もう一度鏡を見た。
それでも、やはり鏡の向こうの黒い犬がヴァルハードに視線を返してきた。
「ねぇねぇ!!」
リアが、うれしそうに話しかけてくる。
「なんだよ?」
ヴァルハードは、しかたなくリアに返事する。
多分この姿になったのも、こいつが何か関係しているはずだ。
それなら、情報収集のためにも話をしたほうがいいかもしれない。
リアは、ポケットから分厚い手紙のようなものを取り出した。
年月によって茶色っぽく色あせ、その上何度も読み返したのかボロボロになってしまっている。
ヴァルハードがじっと見つめる中、彼女は咳払いしおもむろにそれを読み始めた。
「お前は、私がかけた魔法により、制御がかかっている。そして……」
「え?おいおいちょっと待てっ!魔法?制御?」
さっきと打って変わった口調(しかも棒読み)、そして小さな少女にそぐわない発言にヴァルハードは驚いて口を挟む。
リアは、それを無視し真剣な……真剣すぎる瞳で手紙に食い入りながらさらに続けた。
「そして、お前は私の家族となるのだっ!
もし、それに逆らうのならば、永遠にその姿のままだろう!
あーっはははっははっ!!」
ちなみに、最後の笑いの部分まで棒読みである。
「……なんなんだ?今のは?」
「おじいちゃんが教えてくれた、ヴァルハードが家族になってくれる魔法の言葉」
「誰がなるかぁぁぁぁぁぁっ!!」
にっこりとあどけなく微笑む少女に、ヴァルハードは絶叫する。
しかし、ヴァルハードがこの脅迫じみた魔法(?)に、従わなければならないような空気が部屋一面に広がっていたのだった。