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四話 攻略準備〜幼馴染①③④の割り振りおかしくない?〜




 攻略者には、攻教が定めた絶対厳守のルールがある。


 攻協攻略禁止事項第二条——攻略者は一人で塔に挑んではならない。

 

 その際たる理由は、塔に蔓延るモンスターの数にある。

 塔によって違いはあるが、平均して一階層毎に出現するモンスターの数は凡そ五百。

 どれだけ優れた領域を持っていようと、どれほど強力な宝具を持っていようと、個では越えられない壁がある。


 よって、攻略者は五人以上のパーティからパーティの合併からなるクランを設立する。

 攻協の絶対厳守のルールを無視し、攻略者資格を剥奪される恐れからもあるが、一人で塔を攻略しようだなんて自殺志願者は滅多にいない。

 何より、仲間がいれば塔の攻略においてあらゆる面——効率の上昇、攻略時間の短縮、危険の減少と、飛躍的に塔の攻略が楽になる。


 攻協攻略禁止事項第三条——攻略者は、生半可な覚悟で塔に挑んではならない。


 塔の中の危険は、モンスターだけじゃない。

 モンスターの最大数。再出現(リポップ)最高出現(リポップブースト)。|罠。マナ中毒。狂出現(スタンピード)。マナ暴走。

 他にも、数え切れない程の危険が塔の中にはある。


 故に、攻略者はパーティやクランを組み、確実に塔を攻略する為の準備を整えてから塔に挑まなくてはならない。


 それが、攻協が定めた攻略者絶対厳守のルールで、定石で、常識…………。


「ほな、うちら行ってくるでぇー! メーちゃんとフーちゃんは〈銀鉄の塔〉の方よろしゅーな!」


 なんて、君達に常識なんて通じませんよね、ははは…………ん? 三人………………?。


「て、いやいやいやいやちょっと待ってぇぇえええ!?」


 天井の抜けた部屋の中、塔攻略に向けて準備に取り掛かっていた僕は急いで部屋から飛び出して——玄関、今正にクランハウスを出ようとしていた三人に待ったを掛けた。


 声に振り返り、三階にいる僕を見上げる三人——ベガ君、メメちゃん、テオ君。


「何だよッ、メディル。なんか用か? …………見送りか?」

「え、そういう事!? なになに! 嬉しい事してくれるやんめーちゃん! うわー、うちめっちゃ嬉しいわぁ!」

「あ、ありがとうメディル。が、頑張るね」


 察した様にベガ君が言って、その言葉にめめちゃんが嬉しそうに飛び跳ねる。テオ君も分かりにくいが嬉しそうだ。


 でもさぁ、そんな訳なくない?。


「いやいやいや、そんな訳なくない……?」


 そもそもの話、《無域》の攻略組は五人ではなく四人だ。いや、まぁ、五人で合ってるんだけど……。


 戦闘面の話だ。戦闘に置いて、僕の攻略者としての実力は下の下、皆のおかげで攻略者等級こそBだが、所詮、無能者の烙印を押された【無域】だ。

 少し剣が使えて、少し武術の心得があるだけでは、決して埋められない領域の差がある。


 《無域》の中で、間違いなく一番の約立たずは僕だ。


 そんな、戦力皆無の僕がA塔級の塔に挑むというのに——〈冥府の塔〉攻略組——ベガ君、メメちゃん、テオ君。〈銀鉄の塔〉攻略組——フユ、僕。


「どう考えても、割り振りおかしくない…………?」


 そう、どう考えてもおかしい。何故こうなった?。


「別におかしかねぇよ。なァ?」

「う、うん。メディルとフユなら、も、問題ないと思うよ?」


 何処をどう見て?。戦力外一人混じってますけど……。


「あのさ……僕、【無域】なんだけど?」

「知ってる」

「う、うん」


 首を傾げて、きょとんとした顔を浮かべる二人。


 ダメである。全く話が通じない……。

 頼りになるのは、いつも僕の言葉に耳を傾けてくれるメメちゃんだけだ。


「メメちゃんはどう思う? 流石に、後一人こっちに欲しいって僕は思うんだけど…………。っ!?」


 起死回生の一手。頼りの綱であるメメちゃんの方を見て、思わず僕は口を噤んだ。


 見るんじゃなかった。めめちゃん、しゃがみ込んで扉に頭を打ち付けていた……。


「……めーちゃんに弄ばれた……めーちゃんに弄ばれた……めーちゃんに弄ばれた……めーちゃんに弄ばれた……」


 何か聞こえる気がするけど、何か怖い。触れたくない。


 つまり、纏めればこうである。

 ベガ君とテオ君は話が通じない。メメちゃんはご乱心。

 

「て事は、全滅じゃん……」


 誰一人として、僕の味方はいなかった。


 だけど、諦める訳には行かない。このままこの無茶苦茶な割り振りを許してしまえば、僕とフユの命が危ないのだ。


 確かに、フユは強力な領域を持っている。剣の腕だって一流以上だ。

 しかし、【無域】な僕は違うし、幾らフユが強いと言っても、僕を庇いながら塔を攻略するのは流石に無理がある。


 仲間に迷惑を掛けるなんて僕自身嫌だし、最悪この割り振りじゃ、二人揃って命を落とし兼ねない。


 だから、せめて後一人。


「テオ君、メメちゃんは言わない! せめて、ベガ君だけでも——」


 塔に置いて、広範囲型の領域や使役系の領域は、たった一人いるだけで十倍も攻略率が変わると言われている。

 だから、その前者と後者に当たる【星域】と【傀儡ノ域】。メメちゃんとテオ君、この二人は〈冥府の塔〉を攻略する上で絶対に外せないマッチアップだ。

 格上の塔に挑むのもそうだし、相性的にも外せない。


 故に、僕が引き抜く人材はベガ君が最適で、当初の予定でも僕はそう皆に提案するつもりにしていた。


 しかしながら、まぁ、この幼馴染達相手にそう上手く事が運ぶ筈もなく——ドンっと、僕の後ろの扉が勢い良く開いた。


「メディー! 準備出来たよぉ!」


 甲高い声が聞こえて、ゴンっと鈍い音がして——。


「……あ。やっちゃった…………?」

「………………………………………………」


 そこから先の記憶は、僕にはない。



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