【サボってお金を貰える?】静かなる退職について【評価システムの問題】
◇既に社員の6割~7割が「静かなる退職中」
筆者:
本日は当エッセイをご覧いただきありがとうございます。
今回は「静かなる退職」について語っていきたいと思います。
質問者:
なんなんですかその用語は……。
筆者:
アメリカのキャリアコーチであるブライアン・クリーリー氏が2022年にTikTokとYouTubeで発言し、世界中に広がった用語のようです。
明確に大きな機関で定義は定められていないのですが、
・企業には所属しているが、最低限の業務をこなしながら働く
・仕事とプライベートを切り離し、仕事に対してやりがい等を求めない働き方
これら、自らの意思で仕事に消極的な姿勢を貫き、
仕事よりもプライベート優先していることを言います。
ちなみに、アクシス株式会社「静かな退職(Quiet Quitting)」に関するインターネットによる意識調査では、
「静かな退職」の用語の意味を知っていた人は31%にとどまったものの、
用語の定義を知ってから「静かな退職」をしているかという問いに対しては60%が「少し感じる以上」だったようです。
また、米国のギャラップ社のState of the Global Workplace: 2023 Report という統計結果によりますと、
日本人の職場に対して「エンゲージしていない(静かな退職)」に相当するのは7割、
日本人の仕事に対する意欲は僅かに「5%」とどれもほかの国と比べても深刻な数字となっているようです。
ちなみに僕も仕事への意欲ありません(笑)。
個人事業主なので「静かな退職」はできないんですけど(笑)。
質問者:
なるほど、なるべく「自分のために時間を使いたい人」ということですか……。
筆者:
このことはABEMA Primeの8月25日の記事でも問題視されており、
『社会人3年目のえりさん(20代)も、「仕事はできるだけサボった方が勝ち。頑張ったとしても給料は変わらない」との持論を持つ。新入社員の頃から「パソコン打ってる感」を出したり、「作業してます感」をだしたり…。
そんなえりさんは、入社数カ月で休職届を出し、いまも休職中だ。身体の不調は無いが「病院で“適応障害”の診断書をもらって提出し、今は会社に全く行っていないが給料の8割をもらっている。『会社側が原因で病気にさせた』ことになっている。働かないでお金がもらえてラッキーだ」と話す。
えりさんは「会社はクビにできない」と話すが、実際に企業が社員をクビにするのは難しい。労働基準法第16条では「客観的に合理的な理由」が条件とされていて、全く働く気のない社員でも解雇は難しいという。』
と上手いこと社員側が給料が少ないながらも会社を「乗りこなしている」と言う形のようです。
質問者:
こういうのは困りますよね。
産休育休を連発して退職したって言う方も聞いたことがあります……。
もちろん全ての「静かな退職」の方ではないとは思うのですけど……。
筆者:
しかし、一般的には若い方が「静かな退職」と言うイメージがあるようですが実を言いますと全世代的に起きています。
シニア世代の「ぶら下がり社員」と呼ばれている人たちです。
この人たちは年功序列による賃金制度からいまの評価制度への移行の「狭間」といっていい空間にいるいわゆる「団塊ジュニア世代」と言われている人たちですね。
彼らに関しては「受験戦争」「就職氷河期」と倍率が厳しい時代でありながら優遇制度もなく(だからこそ出生率が低い原因に)、
頑張って就職したのでなんとか会社に最後まで残りたいのです。
質問者:
なるほど、どの世代も大変という感じなんですね……。
◇「静かな退職」は「静かに価格に転嫁」されている
質問者:
日本全体で蔓延しているという事は分かったんですけど。
具体的にどのような形で社会にとってマイナスなのしょうか?
筆者:
まず、社員がやる気がない又はサボっている分が「静かに価格転嫁」されていることが挙げられます。
産休育休ならまだ手当てが国から出ることもありますが、「サボっているに近い状態」に関してはどうしようもありません。
そして会社側としては「なるべく解雇しやすいように非正規労働者を優先」と言ったことを考えるようになります。
皆さんご承知の通り、非正規労働者が増えれば日本国民全体の所得の押し下げ効果になります。
そのために給料が上がらず、また社員側としては働いても稼げないために「静かな退職」をするという悪循環になってしまうわけです。
質問者:
なるほど、リスクがある人材を多く抱えたくありませんからね。
中小企業では特に致命傷になりかねませんから……。
筆者:
先ほど紹介したABEMA Primeではリスクがある人材についての見極め方法として、
「他人や環境に責任を押し付けている」ことを挙げていました。
しかし、こういった状況が続けば「他人を雇いにくくなる」という状況になり事業規模の縮小などが考えられると思います。
いずれにせよ、日本社会のマイナス根本原因の一つと言っていいように思えます。
◇「働き損」状況を打開することが第一
質問者:
具体的にどのような方法で改善することができるのでしょうか?
筆者:
かねてから収入のミスマッチ問題に関しての僕の持論ですが、
人事評価制度に問題があると感じています。
というのも外回りの営業職であれば売り上げに応じた歩合制度というのがあると思います。如実に成果が出ているか出ていないかわかりますからね。
しかし、室内で作業をするホワイトカラーの職業を中心に「”やっている感”を出すだけでお金をもらえてしまう」という状況に根本的な問題があると思っています。
つまり「仕事が手っ取り早く終われば早く帰宅しても給料が変わらない」又は「時間内に予定以上にやればボーナス」という給与評価体系にすることです。
ただ僕は中小企業のコンサルタントと言う立場からこういったことを申し上げてもサッパリ受け入れてもらえないのでやはり社会全体で醸成することが大事だと思います。
質問者:
そうなると国の施策ということですか……。
筆者:
日本においては労働時間当たりの名目GDPにおいても世界的に下位となっています。
2022年のデータでは日本は38.5ドルで、OECD37カ国中22位、G7では最下位となっています。
ちなみに日本と近いドイツは66.7ドル、世界のアメリカは87.6ドルとなっています。
今はこの当時より円安なのでもっと差が開いた可能性があります。
しかし、日本がアメリカの3分の1、ドイツの2分の1しか頑張っていないのか? というとそうではないと思います。
そうなるとやはり、「やる気が出るような社会システム」にすることが望ましいように思います。
質問者:
先ほどの評価システム以外でどのような方法が良いのでしょうか?
筆者:
以前も紹介しましたが、ドイツや欧州には労働時間貯蓄制度というものがありまして、
残業や休日出勤など所定外の労働時間を従業員が社内口座に積み立て、
後で有給休暇などに振り替えられる仕組みです。
残業代でもらう代わりに有給休暇に振り替え、繁忙期を避けて休むことが可能です。
いずれにせよ、現在の給与体系、労働契約条件に関して「生活のために仕方なくやっている」と言う方が6,7割いるという事実は揺るがないと思います。
そして、それを改善していかなくては日本国家全体の浮揚は望めないでしょうね。
◇「非正規型」であるジョブ型雇用や「同一労働同一賃金」は危険
質問者:
世間では今「同一労働同一賃金」と言った方法が2020年以降広まりつつあるのですが、それでは改善されないんですか?
筆者:
そもそもの話、「同一労働同一賃金」は「低い方非正規労働者の方に合わせる」と言ったことも可能なので、労働者にとって必ずしもいいとは限りません。
実際に日本郵政では23年に裁判後に「待遇を同じにする」ということで「正社員の有給が削減」されました。
会社の原資としては限られてくるので、「真の働き方改革」にはならないのです。
企業が従業員の給与を「役員報酬や利益の調整弁」に活用し続ける限りはこの根本問題は解決しないと思います。
質問者:
後はジョブ型雇用も問題と言う話でしたね……。
筆者:
ジョブ型雇用は実質的に非正規雇用に近いですからね。
景気の調整弁としての役割を担っているために企業としては非常に都合が良いために今後推進されていくことは明らかだと思います。
僕が求めたいのは正規雇用でありながらもホワイトカラーが正当に評価され、成果に応じて評価されるシステムです。
これを合理的に評価できるような体系については、ちょっと現在では難しいかもしれないので、AIなどの指標で客観的に可視化されるようになることが望ましいと思います。
質問者:
雇われている側と言うのはある程度厳しい立場にあるという事なんでしょうか……。
筆者:
上にもありました通り「解雇されにくい状況から雇用される側は強い」と言う側面はありますが必ず「搾取されている」と言う状況もあります。
つまり「働き=収入」が直結するためには個人事業主になるしかないと思います。
いったい個人事業主になってどうやって他者と差別化して稼いでいけばいいのかについては次回にでもお伝えできればと思いますのでお待ちください。
という事でここまでご覧いただきありがとうございました。
今回は、評価システムが歪んでいることから日本では6,7割が「静かなる退職」を行っているという事をお伝えしました。
今後もこのような社会問題や政治経済について個人的な考察をしていきますのでどうぞご覧ください。