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序章
ずっと昔。遥か昔。
そんな言葉が似合うほど途方もない過去から、人間という者は存在した。
実際には人間の姿をした者たち、と呼ぶべきだろうか。
彼らは現代の人間と違い、わずかにだが霊力というものを身につけていた。それを狩りに活かしたり何かを作る上で役に立てている。
中には他の者よりも霊力が強い者もいた。彼らは巫女や巫となって村や里を守る役割を与えられることもあった。
この時代、小さな社会がいくつも存在した。
時永一族もその一つだ。五十人ほどが住まう小さな村で、神里と呼ばれる巫女によって守られている。そんな中で人々はのびのびと暮らしていた。
これは時永一族に迎え入れられ、恋に身を焦がし数奇な運命を辿った娘の物語である。