#66 Re:cycle 第13話
運命の日が来た。
この十年間、全てを今日という日のために準備をしてきた。そう思うと、手と足が震えてきてしまう。
緊張して震えているのか、それとも武者震いなのか自分自身でもわからない。
何も未来が変わっていなければ、同じ時間同じ場所で過去の俺たちが殺されてしまうのだろう。
ステラの凶刃を防げなければ四人が死ぬ。逆に凶刃を防ぐことが出来れば未来を変えるために過去へ遡った俺という存在価値が亡くなる。いずれにせよ誰かが死ぬんだ。
だから、俺は喪服を着ることにした。今日という日に対する俺なりの正装だ。
◇ ◇ ◇
有紀奈と先生と共に繁華街を散策して様子を伺う。
先生に俺たちの事情を説明して、九尾の印でステラを探索してもらった。
本来であれば常人を遥かに超える速度で遠距離から急接近してくるステラを正確に捉えるのは非常に難しい。しかし、狙う対象がはっきりしているのであればそこまで困難ではないらしい。
ステラにとって先生の九尾の印は最も相性が悪い能力だろう。
『ある美漢』の世界であっても、有紀奈も先生も四人が殺されることに関してはデメリットのほうが多かったはずだ。それでいて介入が遅れたのは、恐らく過去の有紀奈と先生はもっと離れた場所にいたのだろう。
なぜ二人がこの場所にいたのかは今となってはわからない。きっと俺たちが出かけるたびに四人の行動を見て面白がっていたのかもしれないな。
だが、この『恨み感』世界では俺という異物が介入しているからそれはない。
「……よし! 掴めた! 高速で移動しとるが一本奥の裏道に進んでおるようじゃ!」
先生がステラの位置を特定したようだった。
「……やはりそこか」
十年前――俺が死にかけた場所と同じ場所だった。ここまで未来は変わっていない!
さぁ、その時だ……!




