#40 恨み感 第20話
「ところでシキとやら、お主はどういう経緯でユキナに同行することになったんじゃ? もちろん話せぬのであれば、それはそれで構わぬが」
夏祭りの出店が立ち並ぶ人混みの中、篠崎から一歩後ろを歩む政木がりんご飴を食べながらシキに尋ねる。
「詳しく話せない部分もあるが、簡単に言えば命の恩人だ。道端で死にかけていたところを有紀奈に助けられたんだ」
「ほう、あのユキナが人助けとはな、珍しいこともあるものじゃ」
話しながらも政木はりんご飴をガリガリと齧っている。
いつの間にか頭の横には狐のお面をつけ、もう片方の手にはイカ焼きも持っており夏祭りを遺憾なく満喫している様子が伺えた。
「気まぐれか或いは面白そうだから助けたのか判断しかねる部分はあるが、それでも結果として助けられたのは事実だ。それに今は俺の目標のために共に歩んでくれている」
「それだけ聞くとまるで別の誰かの話を聞いておるようじゃ、本当にユキナの話か?」
「紛れもなく篠崎有紀奈の話さ。まぁ、その目標が面白そうだからって感じなのかもしれないが、少なくとも俺からしたら恩人であり協力者なのは事実なんだ」
「あやつがそれほど信望のある者とは思っておらんかったが、あやつを慕うとは誠にお主も酔狂じゃのう」
「もちろんレイラフォードである者を殺すという使命については同意は出来ないし、もし目の前にいたら止めはする。ただ、止めはするけど止めるために彼女と戦おうとは思わない。単純に勝てる見込みが無いというのもあるが、実際のところは有紀奈と敵対したくないという気持ちが前に出てしまって消極的な肯定になってしまっている、情けない話なだけだ」
政木はイカ焼きを食べながら、さっきまでとは打って変わって真面目な顔でシキの顔を見つめた。
篠崎が少しばかりでも心を許している彼に一体何があるのか、見つめても答えは見つからなかった。
「……あれはあれでずっと一人じゃったからな。お主のように仲間と呼べる者がおるのは良い傾向かもしれぬな……。レイラフォードを殺すという点においてはユキナとは敵対関係のワシが言うのもなんじゃが、しばらくはお主がユキナを支えてやって欲しい、頼まれてくれるか?」
「頼まれなくともそうするつもりさ。ただ、俺が支えようとしても有紀奈が受け入れてくれるかはまた別の話だけどな」
シキは政木の顔を見つめて少しだけ柔らかい表情を見せる。
その笑顔に少しだけ見覚えのある人物が頭によぎった。
「お主――いや、ありえぬか……。なんでもない……」




