#29 ある美漢 第15話
アタシ、平野愛は品定めしていた。
ヒカリちゃんから恋人が出来たと聞かされたとき、嬉しくもあり不安でもあった。
ヒカリちゃんは良くも悪くも『良い子』過ぎる。だから、相手が強く出てきたら断れないタイプだと思ってる。
その恋人とやらがどんな人物なのか見ておきたかったのだけど……。まさかこんなに早く機会が訪れるとは、流石に思ってなかったなぁ。
それに、ヒカリちゃんが何かある度に口にしていた『ハルくん』とやらとも、まさか同じタイミングで会うことになるなんてねぇ。
だから、この二人の事をチェックするのが今日の私の目的――だったんだけど……。
イルカ! ベルーガ! ペンギン! 他にも可愛い子達ばかり出てきて、正直それどころでなくなってきてる!
「平野先輩ぃ、ヒカリ達もう先に行っちゃってますよー」
少し離れた場所から退屈そうな春昭くんの声が聞こえてくる。
おいおいおいおい、ヒカリちゃんと雅彦くん、早すぎないかい? 折角のデートなんだからもっとじっくり楽しもうゼ!
「平野先輩ー?」
「わかってるぅ! わかってるからぁ!!」
さっきまで私の後ろを歩いていたはずの春昭くんが、いつの間にか前にいて急かしてくるし、もぅ。
「――まぁ、元々ヒカリ達の邪魔をするつもりなかったから、アイツらは二人にして、俺は先輩のペースについていきますよ」
気がつくと、先に進んでいた春昭くんが私のすぐ隣まで戻ってきてくれていた。
「えーっと、うん、ありがと……」




