「異世界で何をやっても女の子に『凄い!!』などとチヤホヤを再現マシーン」は税込58000円!
「お、届いた届いた!」
俺は白箱を見ながらそう呟いた。その箱の大きさは人間の半分ぐらいはある。なかなか大きな荷物だ。
カッターでテープを斬り白箱を開封する。その大きさに少し悪戦苦闘しながら開くと、人間のような風貌の女の子のロボットが姿を現した。人型の金髪美少女を模したようなロボットだ。俺は近くにあった説明書を手に取るとそれを読む。
『なろう式絶賛マシーン』
表紙にそう書かれた説明書を開く。薄っぺらい紙の説明書で10ページぐらいはある。表紙にはこの機械の絵と黒い人間が描かれている。
「えーっと、『なろう式絶賛マシーン』これを使うとまるで小説家になろうの主人公のように絶賛されること間違いなし!...か」
小説家になろうで無双する系のものには登場人物がやけに絶賛するものが多くある。時には大したことないものでも仰々しく「すごい!」だの「さすが!」だのとひたすら主人公を絶賛するものさえいる。
俺はロボットと説明書を見比べながらロボットの後ろの方にある赤いスイッチを押す。するとブーン、というような音が少しの間響き、そのロボットは起動した。
「名前を入力してください」
「名前か...」
その音声に従って自分の名前を言う。すると機械音の後名前を記憶したロボットは「確認しました」と言う声を出す。声も機械音ではなく人間の声にそっくりなほどだ。
「さて、洗濯でもするかな」
「洗濯もできるんですね!!さすがです!!」
洗濯というワードに反応して美少女ロボットはそのようなセリフを述べる。普段あまり褒められる事はないのでなかなかいい気分な気がする。
「洗濯ものをたたむとテレビをつける。テレビでは星座占いをやっていてちょうど1位と12位の発表だった。ドラムロールの音から光り輝くような演出ののち、テレビに1位の星座が表示される。
「お!1位」
「1位だなんて...さすがですね!!」
その声に反応してロボットが感嘆の声を上げる。少し仰々しいような感じだが気分がいい。ふーっと手を真上に上げて立ち上がる。
今日は用があり外に出る用がある。
「よーし、準備オッケー...っと」
諸々の準備をして外に出ようとすると、ロボットまでが付いてくる。
俺が歩くとその後ろをロボットが付いてくる。2、3センチほど間隔をあけてギシギシ音を立てて歩く。
ロボットだが人形ということもあり、そこまで違和感がなく人の目もそこまで気にならない。
「おっと!」
石に躓いて転ぶ。するとそこで感嘆の声を上げる必要もないのに、またロボットは感嘆の声を上げる。
「さすがですね!!」
「いや、そこであげなくても良いんだけど...」
「流石ですね!!」
その感嘆の声はさらに大きくなる。周りの人が転んだだけで上がった感嘆に、周りの目はこちらを向く。
「あーもう」
そう言いながら立ち上がって歩き出す。
だが、今度は向こうからトラックがやってきて水たまりの上を走る。するとそこに溜まっていた水は勢いよく俺の方に飛び散っている。
「水たまりが...そんなことできるなんて...!」
別のパターンのセリフが出た...のだが褒めて欲しいシチュエーションではない。
「もー褒めて欲しいんじゃねーのに」
そう言いながら濡れた服を見ながら俺は苛立ったように感近くに落ちていた赤い缶を蹴り上げる。するとその缶はくるくると回転しながら近くにあった青いゴミ箱の丸い口の中に入った。
「空き缶を入れるなんて...!」
「今は褒められても嬉しくないのに...」
不幸の後ということもありあまり喜びを実感できない俺はじゃあ、とため息をついて歩き出す。
歩いていて、ふと後ろを向く。あのロボットは先程まではついて来ていたのだが、今は静止して動く気配すらない。
「あれ?おい!動かねえじゃねえか!おい!!」
ロボットに近づいて優しく叩いてみる。だがロボットはうんともすんとも言わない。
後ろにある青いスイッチをオフと書かれている左側ところまで移動させ再びオンと書かれている右側のところまで移動させる...のだがやはり何も反応がない。
「おいおい!壊れちゃったのか!?頼むぞ!!」
そういうがやはり何も反応がない。周りを見渡すがこれといって他のボタンも見当たらない。
「何でだよ!!ダメじゃねーか!!」
「どうですか?」凄いでしょう?」
テレビの画面には、先程の購入者の映像と、『購入者の様子を見てみよう!』というテロップが表示されている。そして髭を生やした男が一人。
先程のロボットを叩く購入者の姿は小さく画面の右下の方に表示されている。
「さあ!君も このなろう式絶賛ロボットで気持ちよくなろう!!!」
その言葉の後に提供という文字が表示された。