ジョージ・スコッチフィールドの奇妙な一日
今回はあの男……ジョージ・スコッチフィールドの一日に密着です!
俺の名前はジョージ・スコッチフィールド、通称<百獣>。世界教会ロンドン支部長だ。
何で百獣って呼ばれてるかって? そんな事、自分で考えやがれ。
……いや、教えてやるよ。その方が俺の強さが身に染みて理解できるだろうからな。
きっかけは俺の能力に敬意を表して、雑魚どもが百獣と呼び始めた事だ。
そんな俺の能力はたった一つ……力だ。圧倒的で無慈悲な暴力。これ一つで俺は支部長にまで成り上がった、野獣のような人間離れした怪力の持ち主だ。
武器は使わねぇ。武器に頼るなんて弱者のする事だからな。俺は絶対的強者、だから百獣だ。
よく分からないだと? じゃあお前はブリタニカ百科事典を、指の力だけで引きちぎることは出来るか? 厚さ1メートルの金庫の扉を殴ってぶち抜けるか?
俺なら出来る。それが俺の力、暴力だ。
俺の強さが分かったところでサービスだ。特別に俺の一日を紹介してやろう。
まず朝は必ず夜明けと共に起きる。そして支部の屋上に行って大声で遠吠えするんだ。なんでそんなことするかって? 試しにやってみな。小便ちびるほど気持ちいいからよ。
部下からは迷惑だと苦情も入ってるらしいが、そんな事はどうでもいい。俺がこの支部の王だ、やりたいようにやって構わねぇだろ?
そのあとメシを食う。俺のメシは三食決まってる。朝は牛肉、昼も牛肉、夜ももちろん牛肉だ。血が滴るレアステーキを食い切れねぇほど焼かせる。食い切れねぇ分はもちろん処分だ。
勿体ないだと? 馬鹿め、男のロマンが分かってねぇな。食卓に収まりきらねぇほどのステーキだぞ。成功者しか見れない光景がそこにあるだろうが!
食後はもっぱらトレーニングだ。間にメシを食って、日暮れまで鍛え上げる。汗を流すのは気持ちいいぞ。酷使した筋肉が悲鳴を上げるその瞬間、俺は生きてることを実感するんだ。
晩メシの後は俺の一番嫌いな時間だ。部下がその日の報告をしたり、指示を仰ぎに来たりする。
嫌いな理由はただ一つ。あいつ等、話が速すぎるんだよ。俺は物事を吟味するタイプだと自負してる。それなのに次から次へと話を進めやがるんだ。ひでぇだろ?
挙句の果てに、支部長は話を聞かない自分勝手な人間だと陰口を叩かれる。そうじゃねぇ。丁寧に考えてるだけだ。それなのに、きっと脳細胞まで筋肉だから馬鹿なんだとコソコソ言いやがる。
もう一度言う。俺は馬鹿なんじゃねぇ、考えをゆっくり吟味するタイプなんだ。
昨日も厄介なのが来やがった。レイ・チェンバース、うちの支部でも特にややこしい奴だ。急に辞めると言い出したが、俺はそれより仕事の出来が気になったから先にその話を聞いた。
すると犯罪者を逃がして、同僚を殺したと言いやがった。
いつもなら即刻ぶち殺してやるところだが、あいつは本部のお気に入りだからな。仕方なく本部へ電話して許可を得てから殺してやった。
……はずだった。処分を終えて、部下に死体の処理を頼んだ間に死体が消えやがった。脈が止まった事は確認したのに、そんな事あるか?
死体のあった場所を見ると、血の跡が出口の方へ続いてた。逃がしてたまるか、そう思ったらいきなり停電しやがった。さらに侵入者が現れたんで仕方なくそっちの処理へ向かった。どうせ重症だから逃げられはしねぇ、そう思ったからな。
侵入者はすぐに見つかった。小柄で全身黒づくめの奴だ。多分、女だな。
俺は部下に殺せと命じた。こんな奴、俺の出る幕じゃねぇ。
そしたらどうだ? 部下達は一瞬でやられやがった。全く根性のない奴らだ。仕方ねぇ、俺が相手してやるしかねぇよな。
それで掴みかかろうとした途端、針が飛んできて俺の頭に刺さったんだ。痛くも痒くもなかった。
馬鹿にしてんのかと思ったが、どういう訳か全く動けなくなったんだ。
そいつは懐から短いナイフを取り出して、動けねぇ俺を何度も斬りつけやがった。
流石の俺も参ったな。斬られる度に血が噴き出して、みるみるうちに血だらけになっちまった。
トドメに俺の脇腹にナイフをぶっ刺して奴は逃げやがった。俺が覚えてんのはそこまでだ。
で、今だ。俺は懲罰房の地下深くにある独房に入れられてる。鎖を巻かれ身動きが取れねぇ。普段ならこんな鎖、すぐにぶっ壊せるが……さすがの俺もこれだけ傷を負ってりゃ無理ってもんだ。
まあ、上層部は俺が用済みになったんで殺すつもりだろうな。俺ならそうする。
って訳で暇つぶしに付き合ってくれてありがとよ。にしても腹が減った、肉が食いてぇ。
そういえば俺が処分し損ねた奴はどうしてんだろうな。まあどうせ世界教会から逃げられはしねぇが。
如何だったでしょうか? 本人は否定していますが、正に脳筋。こんな上司の下で働くロンドン支部の人達は苦労している事でしょう。
さてさて閑話休題。次回はレイ・チェンバースのお話です!
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