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レイ・チェンバースは悪夢を見ない  作者: ネジマキピエロ
[第一章]レイ・チェンバースの奇妙な一日
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大脱走

第1章完結です!

「ゴホッゴホッ……ハァハァ……ロンドンに帰ってきたのか?」


 目覚めると、見慣れた支部の廊下に倒れ込んでいた。


「うっ……痛い」


 呼吸をする度に身体中に激痛が走る。目の前には血溜まりができていた。


「ジ……ジョージは?」


 痛む身体に鞭を打ち、なんとか立ち上がり、壊れた壁から支部長室を覗き込むと……見つけた。

 ジョージは電話を掛けている。会話の内容はよく聞こえないが「死体の処理をしておけ」とだけ聞き取れた。


 僕が死んだと思っているらしい。ならば好都合だ。今は逃げる事を最優先で考えよう。

 ジョージに見つからない事を祈りながら、よろけつつ建物の出口を目指す。


「くそっ……もっと早く歩けよ」


 逸る気持ちをよそに、いつもの半分以下の速度でしか歩けない。ジョージが電話を終えて廊下に出てきたら? 今の僕では抵抗するまでもなく殺されてしまう。

 それにしてもなんて長い廊下なんだ。15メートルほど進んだところで心が折れそうになる。


「……死体は支部長室の前にあると言っていたな」


 後方から人の声と複数の足音が聞こえた。

 まずい! 後ろを振り返ると3人の隊員が支部長室に向かって走ってくるのが見えた。そして僕をさらに絶望へと追いやる事実に気づいた。

 血だ。倒れていた血溜まりから僕のところまで、身体から滴る血が道しるべを残していた。薄暗い照明の廊下だが、目を凝らせばすぐに気付かれてしまう。


「支部長から連絡のあった死体はどこだ?」


「支部長! 発言許可を願います! 死体はどこにあるのでしょうか?」


「あぁ? そこに転がってんだろうが」


「ですが支部長、死体がありませんっ!」


「どこに目ぇつけてんだ? ここに……」


 ジョージが廊下に出てくる。

 もう駄目だ、ここまでか。僕の心は完全に折れてしまった。せめて痛みなく殺してくれと、ジョージにすがりたい気持ちが芽生える。


「おい!! 死体はどこだ!?」


 ジョージが血溜まりを見て、隊員たちに怒号を浴びせる。


「いや……待て」


 ジョージは膝をつき、血溜まりを観察し始めた。


「血の跡が続いてるな。あの野郎生きてやがったのか! こっちに逃げたんだ!」


 ジョージが僕の方へ顔を上げようとした瞬間、ブゥーンという音が聞こえ、辺りは暗闇に包まれた。


「おい、どうなってやがる! 停電か?」


 見られてない? 間一髪、気付かれなかったらしい。

 その途端、僕の心に再び火が付き、出口に向かって歩き始めた。


 数歩進んだ時、今度は侵入者が現れた事を意味するサイレンが鳴り響いた。このサイレンが鳴った際は、支部長を筆頭に猟犬(ハウンド)全員で侵入者の捕縛、もしくは殺害が義務付けられている。


「侵入者! 侵入者! 懲罰房付近にて確認! 応援求む!」


 続いてアナウンスが入り、侵入者の詳細な位置を知らせる。


「支部長! 侵入者です!」


「お前に言われなくても分かってる! 死体の話はあとだ! 行くぞ!」


 ジョージ達は僕と逆の方へ向かって走り出した。懲罰房への最短ルートは僕の逃げる方向と真逆だ。

 助かった。侵入者が気を引いてる隙に逃げ出そう。




「ハァハァ。ここまで逃げれば大丈夫」


 支部から脱出した僕は、居住区の路地裏へ逃げ込み一息つく。

 なんだか眩暈(めまい)がするし、視界が暗い。


「少しだけ……寝よう」


 目の前が一気に暗くなり、僕は倒れ込んでしまった。




 ――しばらく経ってから、一人の男が倒れているレイの前に現れた。


「ふむ、意識がない。それに輸血が必要じゃのう。猟犬(ハウンド)の制服か……まあ、野良犬風情と言えど見殺しには出来んのう」


 男はレイの身体を担ぎ、路地裏に建つ家のドアを開け、中へと入っていった。

前回、大活躍しますって書きましたが無理でした。

第2章から活躍します。本当です……許してください。

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