第六話
翌日、僕は部活を休んだ。
天才の相手は疲れるから、普段からあまり部活に行きたくない僕なのだが、今日休んだのは別の理由があってだ。
帰宅後、すぐに着替えて空港に行く。
飛行機に乗るわけではない。
予定より20分早くついたため、少し本屋を見て回った。
時間はすぐに潰れ、僕は約束の場所へ向かう。
「連、また少し大きくなったな」
スラリと高い身長の、茶色の目をした男がそこにいた。
この人は、僕がこの世で最も嫌いな人間である。
「お帰りなさい、お父さん」
「悪いな、少し家を空けすぎた」
父の運転する車に乗り、家に向かう。
「僕も姉も高校生なんだから、これくらいは大丈夫です」
「そうか、一人でよく頑張ってるな」
姉ちゃんの話をしたにも関わらず、『一人』と言ったのはこの人は人の考えている事が分かる、『天才』だからである。
「いや、叔母さんがよく手伝ってくれるから、かなり楽だよ」
今日も行きは叔母さんに迎えに来てもらった(父の車で)。それくらい叔母さんには世話になっている。
「それより、今回はどのくらいの休暇が取れたんですか?」
「ああ、しばらくはこっちにいようと思う。こっちでも仕事が出来ない訳じゃないからな」
まあスマホがあれば作家さんとも連絡が取れるし、あまり問題はないのだろう。
「そうだな、1ヶ月くらいはこっちにいようか」
今までは長くても1週間ほどだった。1ヶ月とは随分と大きく出たものだ。
「母さんは?」
「向かうで缶詰中。売れっ子は大変だな」
終わりしだいこっちに来るってよ、と父は言う。僕は母の事もあまり好きではないから、こっちに来るのが嬉しいとかそういうのは無いのだが、それでも僕自身がする事はしばらくなくなるから、その間は羽を伸ばせる。
久しぶりに、家族が揃うのか……
家につくまで僕は、窓の外を眺めていた。
途中、元気よく走っていた小学生が躓き、足を怪我していたが、見て見ぬフリをした。