第四話
仕事を終わらせ(一時間をはるかに超える作業量だった)、教室で短く浅い眠りにつく。
こうしてみると、僕がボッチのようだが、僕にも話し相手くらいはいる。
例えば響は同じクラスだ。たまに話しかけてくれるし、授業変更、移動教室の時は教えてくれる。
それに、春や日向も同じクラスだ。しかし春は終始女子に囲まれているので、僕に話しかける事はない。日向に関しては、僕と同じように基本的に読書をしている上に、元から口数が少ないので話す事はない。
つまり教室で僕に話しかけてくれるのは響だけとなる。いや寂しくなんかないんだからね?全然。
いや、クラスは違うけど、話しかけてくるやつならもう一人いるな。作品の都合上登場は少し遅くなるらしいが。
「おい、いつまで寝てる。次移動教室だって言っただろ」
もう3限も終わっていたようで、響に叩き起こされた。4限は確か美術だったな。美術は好きだ。時間を忘れられるほど没頭出来ることがあるからな。
僕は単純作業や絵を描くのは割と好きな方だ。
小説を書くのは嫌いだがな。何故小説は嫌いなのかはまた別の話で。
部活の時間になり、僕は部室に向かう。2年校舎からは比較的近い位置にある。
扉を開こうとすると、鍵がかかっていた。今日は一番乗りのようだ。
仕方なく少し遠い職員室に行き、鍵を手に入れる。
再び部室前に行くと、響の彼女ーー確か橘翡翠とか言ったっけなーーが一人ぽつんと立っていた。
言葉を交わすこともなく、僕は扉の鍵穴に鍵を差し込み、開く。
目線を交わすこともなく、橘は部室に入って来た。
そのまま二人とも定位置につき、文化祭の準備を始める。
20分ほど作業をしていて、僕はある事に気がついた。
「なんで他に誰も来てないんだ?」
「導先輩は家の用事で、縁は風邪で学校自体を休んでます」
一瞬、縁とは誰だと思ったが、すぐに西園寺の事だと分かった。西園寺縁。なんとも金持ちそうな名前である。
「春は生徒会だとして、日向はなんだろうな。本屋にでも行ってるのかもしれない。うちの姉は知らん」
「やっぱりこの部活、ちょっとおかしいですよね」
「何がだ?」
いや、本当は分かっているけれど。
「いや、何がおかしいとか具体的な事は分からないんですけど、どこかズレてるなって思って」
予想以上に回答者が理解していなかった。
しかしながら僕はそれを知っている。伝えるなら早めに伝えておいた方がいいだろうと思い、ドアを開けてその辺にほってあった鍵を手に取った。
「どこ行くんですか?」
「隣の部屋」
隣の部屋ーー第四多目的室の隣。すなわち、第三多目的室である。