第四十二話
夏休みというのは、いかにして暇をつぶすかというのもテーマになってくると、俺は思う。
宿題なんて7月中に終わっているし、高校生の経済力では出来ることも限られてくる。大学に行く気は無いので受験勉強は無いし、時間だけが有り余る。
リビングで弟がゲームをしているのを眺めているだけで終わる一日は、俺にとってこの上ない暇つぶしだった。
「兄貴さー」
ネットに転がっているプレイヤーを、場外へと吹き飛ばしたタイミングで、俺の弟こと光が、口を開いた。
「暇なの?勉強でもしたら?」
「その言葉を夏休み入ってから延々とスマブラしてるお前にそのまま返そう」
「しかも俺、受験生だしね」
「ダメダメじゃねぇか。お前、どこの高校行く気なんだよ」
「え?暁だけど?」
「お前の学力で俺と同じ高校に来られてたまるか」
「実力テストの平均87だったよ」
「俺は93だった」
「低レベルな争いはやめなさいって言おうとしたら学力がめちゃくちゃ高レベルだったんだけどなにこの兄弟……」
いつのまにか背後には翡翠がいた。
「ナチュラルに不法侵入するんじゃない」
「いや、鍵空いてましたし……」
早朝に出かけていた光の方を見ると、光は目をそらした。
「で、なんの用だ?」
少しだけ間が空いて、翡翠は言った。
「ちょっと、行きたい場所がありまして」




