第三十六話
黄ばんだ原稿用紙が、三十枚ほど連なっていた。
その瞬間に、忘れていた記憶が呼び戻された。
これは……3年前に俺が書いた、全ての気持ちをぶつけて書き上げた、小説。
思い出したくもない記憶だった。
何故か手が動き、その文字列を目で追う。最後まで読みきった時には、俺は、すでに机に向かっていた。
これを書いた時みたいなアナログな手法ではなく、パソコンでWordを立ち上げる。
これに込められた気持ちの全てを感じ取り、止まらない空想に思いを馳せながらただただ筆を進める。書いても書いても湧いてくるインスピレーションに、時間を忘れて没頭した。
一度目よりは上手く行ったのではないだろうか。なかなかのものに仕上がった気がしたが、書き上げた瞬間に削除を押した。
誰かに見られたいわけじゃない。ただ、自分の気持ちをぶつけただけの駄文を、消したのだ。
書いてる時は、それに意識を傾け、さらに考えた事を具現化できる。それだけなのだ。俺が書いた理由は、それだった。
胸に残った不思議な感情は切り捨て、俺は掃除を再開した。
しかし気づいた時にはもう遅かった。
俺はさっき、何を書いた?何を思って、書いたんだ?
Wordから削除されたその小説は、誰の目にも触れる事はない。
出来るだけ早いペースで投稿する代わりに、1話の文字数は少なくなり、意味の分からない話も増えるかもしれない。
果たしてタイトルに繋がるまでに後何話かかることやら




