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第三十二話

「君が、響くんかな?」

 凛とした瞳に、思わず吸い込まれた。綺麗な黒髪は、目元まで伸びていて、溶け込むようにかけられたメガネが、やけに似合っている。

「はじめまして、早見読です。いつも連が世話になっているそうだね」

 何度も聞いたことがある名前だった。文芸部員なら、いやもしかしたら学校中の人が知っているかもしれない名前だ。

 早見読──伝説の創始者。

 雰囲気からして、只者ではない。

 これが、早見連の、そして早見文の父親。これが、伝説。

「瑞乃……妻は今ちょっと医者と話をしているから遅れてくる。だから──」

 息を呑む。頭が痛くなるほどに、威圧されていた。

「少し、お話をしようか」

 まるで、空気が入れ替わったかのように、部屋の気温が10℃は変わった気がした。

「そんなに怯えなくてもいい。別にとって食おうってわけじゃないし、僕は何も怒ってないからね」

 幸いにも、連は何ともないみたいだしね。と続けるが、果たして目覚めるかどうかの瀬戸際を何ともないと言えるのだろうか。

「ああ、医者はそう言ってたけど、そうだね……3ヶ月と3日後くらいには目が醒めるよ。その時、君には連のそばにいてほしいかな」

 俺は、おそらくこの時ひどい顔をしていただろう。

 心が──読まれている?

 早見さんはキョトンとし、「ああ」と納得した様子だった。

「今じゃ僕の読心術に驚く人もいないからね。うん、僕、人の心が読めるんだよ」

 俺の思考回路は、一体何秒停止していただろ「約3秒だね」う。心が、読める──?「だからそう言ってるじゃないか」ありえない「いや、アリエールでしょ」。

「いやいやいや!自由すぎるわ!何で地の文と会話してんだよ!」

 早見さんは「早見さんはやめてもらえるかな」……読さんは、例えるならポ○モンのグ○ジオのように、手で顔を軽く覆うように乗せた。

「それが僕だからさ!I"m主人公!Thisis主人公補正!」

 なら俺にもかかれやぁぁぁ!!!と怒鳴りたい。いや主人公って何よ。なんの主人公よ。

「あ、そっか。君たちはメタ発言とは無縁なんだね。ちなみに僕は『無気力少年のラブコメ的日常』という作品の主人公だ」

 無気力少年のラブコメ的日常?う〜ん、頭が……

「僕ともう一人、如月月夜ってやつはメタ発言をしすぎて作者に怒られたほどだよ」

 さく、しゃ?コノヒトハナニヲイッテイルンダ?

「あ〜らら。倒れちゃったよ」

「こらこら、怪我人増やしてどうすんの」

「お、瑞乃。どうだった?」

「貴方の子としか言いようがないよね。あれは」

「……そっか」

何故読くんはこんなに自由に動いてくれるのだろう。連載当時から大分性格変わっているはずなのに。そういう作品だったから。

というか響が読くんに振り回されすぎててカワイソス

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