第二十九話
「響!あと1分だぞ!どうするつもりなんだ!」
春が叫んだ。当たり前だ。もうあと1分で、文化祭は幕を開ける。それから1分は誰も来ないだろうが、それを含めても2分。
俺が見つけたイラストと、文さんが探し当てた漫画。そして部室に集まったときに気づいたのだが、実は文さんの机の裏に、ヒントが書かれた紙が貼られていたのだ。それによると、図書室、体育倉庫、そしてパソコン室だった。実際俺は図書室で見つけているし、漫画も体育倉庫にあったらしい。
なので、連にパソコン室に行ってもらったのだ。
今ある二つはもう並べ終わり、後は小説を待つだけだった。
その時、ガラッと勢いよく扉が開いた。
「連!!」
連は一言も喋ることなく、ふらふらになりながら近づいてくる。
そして、俺を通り越して、その後ろにあった、謎の機械にかじりついた。
「連、あんた何して……」
もちろんほんとうにかじりついたわけではなく、覆いかぶさるようにその上に倒れ、そしてその下を弄りだしたのだった。
誰も止める事はなく、ただそれを見守っているうちに、チャイムがなる。
文化祭が、始まったのだ。
間に合わなかったのか?いや、それ以前に連は何をしている?
そのチャイムで我に返り、思考を加速させる。
そして一つの結論に至った。
「……その中にあるのか?」
連は睨みを効かせるようにこちらをちらとみて、軽く首を縦に振った。
蓮の手の上に、自分の手を重ねて思い切りその機械に付いている取手を引っ張る。
それでもビクともせずに、息が切れる。スペース的にここには二人で限界だ。これ以上人は増やせない。
「はっはっはっ、どきたまえよ少年」
諦めかけたその時、声が響いた。
「……七峰先輩?」
忍者のコスプレをした、七峰潜也が、そこにはいた。
「遅いよ、七峰」
文さんが、安堵の息を漏らしながら言った。
「さ、後は任せて、アクエリアスでも飲んどきな」
くいくい、と後ろに刺した親指の方向に、ポカリスエットが2本、置かれていた。
そこ間違ちゃいけないだろ……
グピグピと、二人とも一気に飲み干すと、隣には文さんがいた。
「私が呼んだんだ。あんなやつだけど、頼りになるからね」
文さんは頬を赤らめながらそういい、「それに、」と続けた。
「忍者の末裔だから、こういうの得意そうだし」
「へ?」
「忍者!?」
「マジ!?」
と、俺を含め、部員達はとても驚いた様子だった。
「ほらよ、出来たぜ」
「はやっ」
もう、頭が痛いくらいに驚きの連続だった。
連は黙って席を立ち、取手を引いた。
その中には、紛れもなく、小説の冊子が入っていた。埃の一つも付いていないところをみると、保存状態にはかなり気を使ったのだろう。
連はそれを文さんに差し出した。
「文化祭の始まりだぜ、姉ちゃん」




