第二十七話
姉ちゃんにとりあえずいろんな場所を探せと言われてから、30分。東館をくまなくチェックしたが、見つからなかった。
そもそも、この行動は効率が悪い。無駄に労力を消費するだけの行動なんて、なんの役にも立たないだろう。
こんな時、父さんなら、一瞬で見つけてみせるんだろうなぁ。
やっぱり、僕は才能が欲しい。父さんみたいな天才になりたかった。
だって、僕は出来が悪いから。
昔から、当然のように姉ちゃんがそばにいて、それと比べられるのが嫌で、全てから逃げてきた僕に、そんな事を言える権利があるのかどうかはわからないが。
ただ、疲れは感じたので、ちょっと休んだ方がいいだろう。
風にあたろうと思い、連絡通路に出た。たまたま近くにベンチがあったので、自販機で微糖の缶コーヒーを買って腰をかける。
そういえば、カバンにチョコが入ってたっけな。
部室に置いてきたカバンが、ふと恋しくなった。
「ん?」
台車を押している響が見えたので、反射的に追いかける。
「よぉ、見つかったのか?」
「イラストだけだけどな」
図書室のタンスの中にあったらしい。さすがは響だと、感心していると、「お前のほうは?」と聞かれた。
「成果はなしだよ」
「そっか」
響はなぜか、表情を曇らせた。
しばらく話して、別れた後、一気にコーヒーを飲み干すと、空が急に曇りだした。
しだいに空気が水気を含んできて、今にも降り出しそうだ。
「僕も頑張らなくちゃな」
せめて今くらいは、頑張ってみよう。
西館の4階は、特別教室が集まっている。
部室に帰ったらしい響から、ラインが来たのだ。
曰く、パソコン室に行け、と。
何故か鍵は空いていて、不用心だなと思いながらも足を踏み入れた。
薄暗く、気味が悪かった。
その薄暗い部屋の奥、カーテンが不自然に輝いていた。消し忘れたパソコンの光が反射しているのか?
近づくと、予想通りパソコンは付いていたのだが、画面に表示されたのは、暗号だった。
およそ僕には溶けそうにも無いほど、複雑な。
『レッド 車庫 ラン END』
暗号……ここまで意味不明な暗号作ったの初めてかも?




