第二十五話
「……今年はそう来たかぁぁ」
脱力した様子で息を吐きながら文さんが呟く。
今日は文化祭当日、1日目は1時開始なので、それまでは後4時間ある計算だ。
昨日、三種類の冊子を、それぞれ並べて机の上に置いておいたのだが、今机の上にはそれがない。
どこかに移したわけじゃない。単純に、この部屋にはないのだろう。
「分かったか?これがめんどくさい伝統その1の教師VS文芸部」
犯人は分かっている。この学校の教師だ。主犯は音楽教師の七峰響也。
毎年、上半期の文化祭だけ、こうして荒らしに来るのだ。去年は部室の鍵がなくなった。
かれこれ早見家の親の代から続くこの伝統は、『教師に反発する力をつけるため』とかいって毎年やられているそうだ。
ひとつだけ確かな事は、『不可能』ではないという事。あくまで文化祭が出来る範囲の場所に、答えはあるのだ。だから太平洋に捨てて来たとか、アフリカでライオンの餌になっているような事はない。
これはゲームだ。文化祭を成功させるためには、俺たち文芸部がいなければならない。そして、自分たちの力で成功させろというのが、学校からのメッセージ。
「導くん、行ける?」
いつのまにか俺以外の全員に指示を終えていた文さんは、最後に俺に言った。
「……いや、俺はここに残ります」
少し考えて、俺はそう伝えたのだった。
さて、考えよう。もしかしたら考えない方が楽かもしれないというのは置いておいて。
まず、紙の束だ。大量の紙がなくなった。それを置くだけのスペースはあるとしても、それを簡単には見つけられないところに隠すのは至難の技だろう。
そして、その紙は全て健在である事もルールだ。不安定な場所にない事だけは確かだろう。
今の時点で分かっているのはこれぐらいだろう。
よし、次は考察だ。外れてもいい。可能性も紡ぎ出せ。
わかりにくく、安定感の強い場所。室内である事は確定だろう。その室内の、どこに隠す?
この学校は無駄に広い。全ての教室を調べるのは不可能に近い。なら、いくつかに絞る必要があるだろう。
職員室……調べるのは無理だ。テストなどのプリントが大量にある。
プリント……紙……本……?
「図書室だ!」
ちなみに今日はテストでした。明日もテストです。何やってんだろ、僕。




