第二十三話
「ようこそ、西園寺邸へ」
黒いスーツを着た背の高い男性がペコリと頭を下げ、俺に「ついてきてください」と言う。
そして連れてこられたのは、高級そうな気の扉の前だった。
「お嬢様、失礼します」
黒スーツの男が、ノックをし、返事も待たずに扉を開いた。
「では、私は失礼いたします」
「貴方、例のものは持ってきてくれたかしら?」
「ああ、漫画の事だろ?矢文なんて物騒なものを使わずに、明日学校で言ってくれればよかったのに」
「私みたいなお嬢様が漫画家目指してるって世間にされたらどうなると思ってるの?お父様のイメージが低下すれば大変な事になるわ」
今俺の目の前にいるのは、今朝俺とぶつかり、ほとんどない胸にうずくまらせてくれたあの少女である。
「ほら」
俺は漫画をポンと机の上に置いた。
「なかなか面白かったぞ?ただ人体とかのバランスがおかしかったな」
途端に、少女の顔が真っ赤になる。
「あ、貴方、読んだの!!???」
首を傾げ、わざと分からないふりをする。
「ああ、何か問題でも?」
「あ、あ、あ、あああ、あああああぁぁ……」
何故か机の奥の椅子から、少女は崩れ落ちた。
やれやれ、と思いながら、普段幼馴染にやっているように話しかける。
「お前、いい才能持ってんだからさ、もうちょっと本気でやってみろよ」
「え?」
「俺が、教えてやる。教えるのは得意なんだ。ついでに漫画も得意だし、イラストも見慣れてるからおかしなところは大体分かる」
「それって、どういう……」
「俺が、お前を連れてってやる。夢の世界に」
カッコつけすぎたのがいけなかったのか、俺はこの後、この少女、西園寺縁に漫画家になる道を説く事になってしまった。
これが、俺と西園寺の出会いであり、始まりだった。
この後翡翠も交え三人で部活動を築くのだが、それはまた別の話。




