第二十一話
「うう、酷い目にあったのじゃ」
「自業自得だぞ七峰」
「はやみんは冷たいのじゃ。もうすこし我に優しくてもよかろう」
「まずその喋り方が完全ボールの大嫌いなゾーンに入っちゃってるから。帰って、どうぞ」
「うう、はやみんは冷たいのじゃ」
部長の席で、先程から二人は延々と会話をラリーしている。
「先輩、あの二人普通に仲良くないですか?」
「ああ、あの二人喧嘩ばっかだけど普通に仲良いぞ。文さんのクラスメイト曰くただの夫婦漫才」
「その話、昔姉ちゃんに聞いたことあるな。友達にこんなこと言われてさらに喧嘩になったって」
早見先輩が横から割って入ってきた。ニヤニヤしながら導先輩は言う。
「ん〜。文さんも以外と乙女だねぇ」
「え?どういうことだ?」
どうやら早見家は兄弟揃って鈍感なようだ。
こんなにもわかりやすいのに、気づかないあたり、弟の方はかなり。
そういえば導先輩も昔こんなだったなと思い、私は笑った。
恋ってのは不思議なもので、フラれた時は辛かったけど、何故かスッキリする、か。翡翠のセリフにしてはなかなかにユニークだなと思う。
もっとも、私は恋なんてした事はないから分からないが。
いつか分かる日が、私にも来るのだろうか。




