第一話
一週間が経ち、クラブの体験入部が始まった。
さすがは伝説の文芸部、人の入りが凄まじい。
しかし、入部する部員の数はとても少ない。
その中で一人、即入部すると言ったものがいた。
橘翡翠。類稀なるその美貌から姫と呼ばれた時代もあった。
ちなみに俺の幼馴染で、恋人でもある。
「響、お前彼女いたのか」
「中学の頃からいたけど?」
キャラ設定ばかりで皆さん疲れたと思うのだが、安心してほしい。これで全てだ。
というのも、今年は例年よりはるかに新入部員が少なく、翡翠と西園寺の二人だけなのだ。
しかしまあ、二人というのはいささか少なすぎるとと思うのだが、文さん曰く、「最初も二人だったんだしダイジョーブ!」だそうだ。何年前の話だよ。
今日から一年生が本格的に部活に参加するのだが、相変わらず来る部員の数は少ない。
来たのはいつものメンバーだけだった。他の25人は相変わらず欠席である。
俺は相変わらず自己紹介の必要がないので、その輪から外れたところで、ベタをやっていた。ベタとは漫画やイラストなどの黒く塗りつぶされているところの事である。
この文芸部は、設立当初とは大きく変わってしまって、読書など活動の一割にも満たない。
その代わり、様々な活動が追加されているのだが、それは後ほど。
「じゃあ文化祭の説明しまーす!!」
文化祭と言えば、文化部の花道である。
10年ほど前に超文化系の学校となったこの私立暁学園高等部は、年に2回文化祭を行う事になっている。世界の中でもかなり特殊な学校なのだ。
そしてその1回目が、7月にある。
この部活は活動内容が多すぎて、今から始めても〆切ギリギリなのだ。故に現在手が空いている俺がベタをさせられている。ちなみに文さん以外の部員は自己紹介が終わった後はそれぞれ文字を打っていたりトーンを貼っていたらする。
これは文化祭での活動内容の一つーー
「漫画描きまーす!」
である。
ちなみに他にも、
「イラスト描きまーす!」
イラストの冊子や、
「小説書きまーす!」
設立時のこの活動も勿論ある。
そしてその全てが地獄のような作業量を誇っているのも部員が離れていく理由である。
しかしこの二人ならその心配もないだろう。
なぜならこの二人も、ここにいる誰にも劣らないほどのバケモノだからだ。
それも、圧倒的な才能。発展途上の今ですら、素人の俺ですら分かるほどの。
伝説的な、才能だった。